イホウジン

ブラック・クランズマンのイホウジンのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.1
勧善懲悪の痛快社会派コメディと予想していたが、実態は(意図的に)中途半端な懲悪に終わる重いドキュメンタリー調の映画といった感じだった。

全体に笑いの要素は散りばめられており、ブラックユーモアたっぷりなシニカルなネタの連続は見事。主人公が差別に対する反抗意識を(身体的には)抑えてることが、差別を完全な過去形として笑いに昇華することを可能にしている。発音ネタの所などではあらゆる差別主義者の優越感の薄っぺらさを感じ取れる。
とはいえ映画全体の展開はかなりシュール。特に終盤のハイライトが印象的。警察の力を持ってしても「あの程度」しか出来ないのかと少し幻滅してしまう。しかしながら、ここで懲悪を十分に達成出来なかったことこそがこの映画の最大のポイントだったのだろう。
要は劇映画パートの後のドキュメンタリーパートである。17年のシャーロッツビルの事件で映画の登場人物の本物が現れたり「例の人」の映像が流れたりと、映画の中で起きた出来事を決して過去形にせず未来に向けて映画を通して闘い続けるという監督の姿勢が伺える。
「映画の加害性」に真剣に向き合った点も印象的。この映画で「國民の創生」の存在を知ったが、知れば知るほどこの映画の持つあまりにも強大な暴力に映画を鑑賞する一人として他人事では思えなくなる。映画の加害を自浄するかのような映画だったのかもしれない。
とにかく語ろうと思えばいくらでも語れる良質な作品であることに間違いはない。

終盤の展開が雑だった気がする。この映画の最大の魅力である「バレるかバレないか」が蔑ろにされたようで残念だった。後半で当時の社会の状況説明に走りすぎたのかもしれない。映画の中心が警察の2人からアメリカ国民全体にシフトしてしまった感じがした。
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