ギルド

バハールの涙のギルドのレビュー・感想・評価

バハールの涙(2018年製作の映画)
3.7
ISILの襲撃で夫を殺され、息子を誘拐された母バハールが女性武装部隊を結成し、最前線でISILと戦う戦争映画。

 戦争映画だけど紛争地域の現場で起こる暴力と性暴力により虐げられていた女性が、今の在り様に抗う・自身の尊厳を守るために戦うヒューマンドラマが個人的には素敵で考えさせられる映画でした。
歴史を紐解くとテロリストによる女性への性暴力はISILに限らず起こっているし、そんな破壊する男性らと取返し・修復を目指す女性らの対比的な表現は暗くて地獄のような戦場で繰り広げられる中で的確に映されていたと思います!

 そしてバハールの人物描写とそこで繰り広げられる理不尽さ、が一番の見どころだと思います。
バハールには夫と息子がいるものの、夫が殺され息子が誘拐され、自身も性暴力を受ける奴隷のような存在として描かれていました。そんな悲しい経験を通じて戦う意志の重みを汲み取れる姿も的確ですけど、そんな中で起こる法的な理不尽さも酷い世界だなと感じました…。バハールが盗みを働いて、ISILがそれに感づいて犯罪だぞと警告するシーン・・・これこそテロリストを通じた世界の理不尽さと法律の在り方について考えさせられる描写じゃないかと思います。そんなシーンを見れて凄く良かったです。

 ただ思った以上に宗教間の違いやそれに対して起こる敵側の動機が薄くて、それが物足りないなと思いました。麻薬カルテルを題材にした映画だと、やる動機や殺す動機を描写することがありますがバハールの涙ではISILがただ単に人を殺し、性暴力をする蛮声をあげながら世界を壊すだけの存在にしか見えなかったです。
あと、この映画ではバハールの過去と最前線でISILと戦う今が交互に写される構成で、これによって映画が進むたびにバハールの人物像が浮き彫りになります。個人的にはそのタイミングが少し突拍子なせいか、時間軸がバラバラで映画全体がゴチャゴチャしてて少し見にくいなと思いました。
ギルド

ギルド