やすやす

バハールの涙のやすやすのレビュー・感想・評価

バハールの涙(2018年製作の映画)
4.1
日々何かと戦っている女性は世界中に数え
切れないほど存在している。でも銃を手に
取り最前線で本当に敵と対峙している女性
は稀であろう。そんなSF近未来世界の様な
驚くべき話が現実にある。それがクルド人
の女性部隊。彼女たちが身の危険を顧みず
に自ら兵士に志願する理由は個々によりけ
りだ。けれど男性優位の社会で少しでも女
性の地位向上に役立ちたいという必死な思
いは強く伝わる。
今作の主人公の女性バハールは人質にされ
た息子を一刻も早く自身の手でISから奪い
返すために立ち上がった。そして殺された
家族の復讐のためでもある。
「女性に殺された者は天国に行けない」
ISの兵士が最も恐れることを逆手にとった
言わば彼女たちは最終兵器とも言える存在
だ。
あなたが戦死したらもう息子に二度と会え
ず元も子もなくなるのでは?そんな疑問は
抑え切れない怒りに満ちた彼女には通用し
ない。壮絶な体験を得てバハールは弁護士
から女性部隊のリーダーへと変貌を遂げる。
対話が通じない相手には銃を構えて暴力で
対抗するしかない。
かつて法廷で理路整然と弁論を述べていた
人間が無謀とも言える攻撃を志願するまで
になる。その変貌ぶりは己自身が全く想像
もしていなかっただろう。
日本から遠く離れた世界の悲しい現実をま
ざまざと見た思い。
一人の女性のたくましくも切ない生き様に
鈍器で殴られた様な強い衝撃を受けた。
「されど母は強し」この言葉を改めて噛み
締めた作品でした。
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