ゆず

ドッグマンのゆずのレビュー・感想・評価

ドッグマン(2018年製作の映画)
4.1
ペットとのふれあい映画ではないので、題名だけで選ばないよう願います。
しかし、「いぬの映画」ではないけれど、とはいえ「イヌの映画でない」とは言い切れないかも。人間は「イヌに成り下がる」こともできるし、「飼い犬に手を噛まれる」こともある。
本作では、人間同士の荒んだ主従関係が描かれる。ジャイアンとのび太の間にドラえもんが介在しないまま大人になったような、そんなイメージを持った。(喩えがテキトーすぎる…)

友人ではあるけれど友情はない。けれど簡単に見捨てられるほど無関係でもない。というか、いじめとは往々にしていじめっ子からいじめられっ子への一方的な干渉である。被害者は無視したがっているけど、加害者の方からやってくる。じつは依存しているのは加害者の側かもしれない。
私にも似たような関係のヤツがいたな〜と中学時代の級友Hを思い出した。転校生だった彼は、私がおとなしい人間で何をしても怒らないと分かると、一人だけ悪口のアダ名で私を呼び始めたのだ。暴力はなかったが、とにかく強引で、こっちの気持ちなど考えず…、まあ要するにナメられていた。
そのくせ、自宅に私を招くくらいには気に入られており…、なんというかとてもめんどくさかった気がする。断るのもめんどくさいので一度Hの家に行ったけど、楽しかった記憶はない。たぶん向こうは「可哀相な私」と遊んでやってるぐらいの認識だったのかもしれない。こっちはHなどいなくても遊び相手に困らなかったのだが…。
とはいえ、Hを積極的に排除するつもりもなかった。ウザいやつだがそこまで憎んでもいなかった。別々の高校に進学した瞬間、完全に縁が切れた。当時スマホやLINEのようなものがまだなくて良かったと思う。(Facebookをやるつもりはないw)

(つーかこんなレビュー読んで誰が喜ぶんだよ…)

中学生で人付き合いの距離感とか分からないのは仕方ないとは思うが(Hだけでなく、私だってナメられっ放しが良くないことをわかってなかった)、この映画ではそれが大人になっても続いてしまっている。自分の思い出と重なる部分もあってなんだかイタイ気持ちになりつつ、しかしイタリアの寂れた街を舞台にした暗いドラマが面白かった。ムラ社会を描いているところも興味深い。ラストあたりは「あぁ…あぁ…」言うしかなかった。(心の中で)
パルム・ドールを『万引き家族』に盗られてしまった秀作。
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