イホウジン

アメリカン・アニマルズのイホウジンのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
3.8
ノンフィクションの極限と限界に挑んだ、限りなくドキュメンタリーに近い劇映画。

冒頭の「これは“事実”の映画です」というテロップに全てが表されている。実際の事件の犯人達の証言をベースに映画が展開されていく訳だが、良い意味でその証言に過剰に寄せているのである。つまり、犯人達の証言の食い違いまでも劇映画として還元しており、その意見同士の繋げ方のパターンの多様さに驚かされるのである。二つの証言を同時に展開させたり、後になって証言の真偽を検証したり、常に観客を飽きさせない構造になっている。また、これは他の“ノンフィクション”映画への挑戦状とも読み取れる。ノンフィクションを一人の証言をベースにする場合の危うさや、映画として「起承転結」を明確にすることの薄っぺらさ(今作でも起承転結は存在するが、終盤にある仕掛けが待ち受けている)を意図的に露呈させている。
展開の構造も面白い。犯人達それぞれの心理描写の丁寧さが良い。各々のバックグラウンドやモチベーションの違いによって生じる軋轢や緊張感を的確に表している。主人公を明確にしないことで視点を巧みに操ることができ、観る者の思考を誰か一人に寄らせないようになっている。

ストーリーは淡泊だった。結末ありきの映画であるのは致し方ない点ではあるが、やはりクライムパートの緊迫感は希薄だった。
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