トモ

アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノールのトモのレビュー・感想・評価

5.0
世界最高峰のテノール歌手、アンドレアボチェッリの自伝的小説を映画化

凄く良かった

彼の出生前からパヴァロッティ、ズッケロに見出だされデビューする位までの話

生まれつき視力が弱く回復も望めない彼が両親、友達、彼女、叔父、家庭教師、マエストロ等の愛情や支えを受けて成長していく様が描かれているが

人生の途中で視力を失ってしまうのとは違い、生まれつき目が不自由で目に見える鮮明な世界を知らない彼にとっては本当の絶望すら感じた事が無いということと

本当に好きな音楽を続けていくことが両親の経済的負担になっていること、恋人を傷付けてしまうこと

彼の葛藤は自分が音楽と向き合う上での障害も勿論あっただろうけど、それよりも人からの愛を受ける事のプレッシャーが大きかったのかと

音楽家として生計を立てなければ誰かの負担になってしまう、だから彼は好きな音楽を続けたいという気持ちを持ちながら他の選択肢を常に考えていた

しかしある意味現実的で他人からの偏見もすんなり受け入れてしまうような彼を導いていったのはやはり周りの人達でもあって、どんなに天性の才能があろうともそれを見出だすのには様々な支えがあるのだと感じる

話の大きな起伏がある訳でもなく断片的な所もあるが、それが良かったとも思う、マエストロとの件や親子の愛、恋人との育まれていく愛、バーでのシーン等々、音楽、風景、演技が相まって良いものを観たという余韻

受け身な部分が強調された作品ではあるが、彼が自らの意思で道を切り開いていった部分や、自分の歌声が人を幸せにできると自覚できた経緯などあまり触れられていない部分は彼の小説や音楽に触れる事で補えるんだろうと思う
トモ

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