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記者たち~衝撃と畏怖の真実~のGreenTのレビュー・感想・評価

3.0
コレを観て一体何が学べるのだろうか?きちんと真実を追求しようとしたジャーナリストもいた、ということ?そういうジャーナリストはいたし、彼らはそれを記事にすることを阻止されたわけではない。それでも政府の嘘は通り、イラク侵攻は起こったのだ。

この映画で分かったのは、ナイト・リッダーの記者たちが、どのようにして政府の発表が嘘だと突き止めたのか、ということ。しかし、それがマユツバもんだということはみんなわかっていた。アメリカ国民だけじゃなく、日本人も、他の国の人も。かなり見切り発車的にイラク侵攻したのは、みんな知っていた。

アメリカ政府がやるって言ったら、やるのだ。今までだって、アメリカが侵攻しようと思ったら、その国がやってもいない悪事をでっちあげたり、物資供給を止めたりして、攻める理由を作っては戦争してきたんだから。日本だってそうやって戦争に駆り出されたのだ。

アメリカ国民だって、ベトナムで散々な目にあったのに結局イラクも起こった。ジャーナリストがちゃんとしていないとか、TVがプロパガンダを出したとか、そういうことではないと思う。だって、私の周りにいたほとんどのホワイトカラーの人たちは、イラク関係ないんじゃんとか、大量破壊兵器の件も、どっから出てきたの、その話?って思っていたし、ブッシュがお父さんの仇を取ろうとしているだけなんじゃないの?なんて話はどこでも出ていた。

『バイス』でもこの映画でも、イラク侵攻はでっち上げだったってことになってるけど、アメリカ政府はなんのためにコレをやったのかは言及されてない気がする。チェイニーの石油会社が儲かるから?ブッシュがパパの仇を取りたかったから?中東が安定して、中東の国々の国力が上がると、驚異になるから、中東がモメていた方が欧米は安心できるから?

多分、上記全て。私はめちゃくちゃ政治弱いけど、私でもわかる。しかも、コレを世界中が容認している。だって、アメリカに驚異を与える国が出てきたら、第三次界大戦になる。アメリカがなんでも好き勝手にやるのは許せなくても、じゃあアメリカを倒すって国が出てきたら、戦争になって困る。

それに、戦争になってアメリカが倒されて、新しい国がアメリカの地位に立ったら、結局はアメリカみたいになるのだ。アメリカひでえな、って思うかもしれないけど、多分権力を持ったらみんなこんな感じになるんだと思う。ぶっちゃけ、本当に世界中を平等で平和にできる指導者がどこかに存在したとしても、その人が上に立つまでに、第三次世界大戦は避けられない。そうしたら、どこが戦場になるかわからない。自分が住んでいるところが爆撃されたり、自分の家族が死んだりしても、それを望むの、みんな?

もちろん、フセインなんかほっといて、テロリストを追いかければ良かったんじゃん、って側面はあるんだけど、『バイス』でも描かれていた通り、テロに対する戦争というイメージが湧かなくて世論が支持しないから、「敵国」という存在を作らなければならなかった。

そもそも、なんで世論なんか気にするのか、良くわかんなかった。先にも言及したように、みんな嘘くさい!ってわかっていて何もしなかったんだから、PR会社雇って世論調べて、支持を得られるような「嘘」をでっちあげようなんてしなくても、みんな見て見ぬ振りをしていたと思う。

この映画自体はそんなに悪くないし、役者さんたちもなかなか健闘していた。ウッディ・ハレルソンもロブ・ライナーもいい味出していたし、実際ジョークは結構面白くて、声を出して爆笑したところが2箇所ほどあった。でも、「あの映画のウッディ・ハレルソンをもう一度観たいからまた観よう」って思うような映画ではないし、多分、2度観ることはないだろうな。
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