真田ピロシキ

CURED キュアードの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

CURED キュアード(2017年製作の映画)
3.0
ゾンビウィルスから回復した感染者が差別を受ける話でコロナ差別を連想させられる映画ということで期待して、回復者が家に嫌がらせの落書きや時に直接的な暴力を受ける姿はアジアンヘイトを連想させ、ゾンビなだけに穢れのように見られるのは日本人の感覚なら特に感じ入るものがあると思う。しかしコロナ禍以前に撮られた映画なので後付にすぎなくてそこを期待しすぎると拍子抜けする。

ゾンビから回復した主人公のセナン(サム・キーリー)は義姉のアビー(エリオット・ペイジ)に引き取られて甥のキリアンと共に新生活を始める。本作のゾンビ回復者にはゾンビだった頃の記憶があって、兄でアビーの夫のルークを食い殺した秘密を抱えてて苦しんでいる。そこに近づいてくるのがセナンをゾンビにした同じく回復者のコナー(トム・ヴォーン・ローラー)。この男がよく分からない男でセナンに執着してて裏切られたと思ったら憎しみを露わにする。セナンに恋愛感情を抱いているのかとも思ったがアビーに対しても初対面で馴れ馴れしく触れようとする奴でかなりキモい。しかもコイツ、回復者は差別されてて社会復帰に置いても高給取りの仕事には就けなくてそれは酷い話とは思うけれども、「俺は政界出馬を予定してた弁護士だったのに清掃員なんてやってられるか」と言うのにはコロナ禍を生きる身には「うっせぇわブルシットジョブ野郎。エッセンシャルワーカー舐めんな!」と思って全く好感が持てない。そんな奴がくたばる訳でもなく、むしろゾンビ禍2波収束後の世の中においては回復者の代表として影響力を増しているのは現実的にはありえそうな話だがストレス。回復者を脅威とみなしている軍人がいて一度は拘束されるのに、どう考えても切り抜けられなさそうな状況で超ご都合主義で軍人を殺して生き残れるのも嘘臭さを感じてシラケた。

それとセナンが社会復帰後に就くのは未だ治療の適わない感染者を治す医者の手伝いなのだが、この医者は患者とは恋人のようで、未治療者を処分する話になった時に回復者同盟のテロに加わりその事で事態を悪化させるのはゾンビ映画らしい。ただそれだと割と平凡なゾンビ映画の感が拭えず、ゾンビが町中に溢れてそれをかなり遠距離から華麗に撃ち殺すアビーの姿も量産型ゾンビ映画の印象を強めさせられてしまった。