タキ

孤狼の血 LEVEL2のタキのネタバレレビュー・内容・結末

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ガミさんの意志を継ぎ、降りることは許されない綱渡りを初めて3年、日岡もそれなりの面構えになっている。とはいえ、日岡とチンタの取調室のシーンはどうしてもガミさんと比べてしまう。大上がいないのにその場を支配しているのは大上の幻影なのだ。日岡が超えられない一線が画面からありありと見てとれる。正義の顔をした人間を完膚なきまでにたたきつぶすには底なしの悪が必要だとばかりにレベル2で投入されたのが上林という狂犬。光を映さない暗黒の瞳を持つこの男はしょっぱなのお礼参りのレベルがもはや常軌を逸している。その後もヤクザ社会の仁義などまったく意に介してない傍若無人ぶりで暴れ回り、日岡は撃たれてもボコボコにどつかれても穴が開くほど蹴られても立ち上がり、ヤクザ映画だと思って見ていたら段々ホラーかゾンビかスプラッタ映画を見ているような気分にもなってくる。このモンスター上林に引きずられて日岡は孤立無援となり、組同士の抗争だったはずがタイマン勝負の果てに…という展開なのだが、上林はいったい何がしたかっただろうか。日岡の差配で一ノ瀬に殺された五十子の仇を打ちたかったのか、広島を牛耳る組の頭になりたかったのかよくわからない。しかしその展望のなさが逆に彼の闇を濃くしたような気もする。
日岡にとって黒幕が警察上層部だったことよりも深い虚無感に襲われたのは暴対法の成立かもしれない。3部作とのことでこれからどんな展開が待っているのか。絶滅した狼の幻影のように大上の影はまだ日岡のどこかにひそんでいるのか。どう決着をつけるのか興味がある。
松坂桃李は前作のインパクトを超えることはなかったが、村上虹郎とのバランスは良かったように思う。なんといっても出演作品をワンランク引き上げる鈴木亮平の全身にみなぎるパワーの勝利のような気がしている。この人を見ているとたとえ脚本や演出がイマイチでも俳優の力でなんとかしようという気概をいつも感じる。
むせかえるようなバイオレンスの中で唯一フフッと笑ってしまったのがパールエンタープライズ社長の音尾さん(役名忘れた…)指が2本ほどなくなったけど生き残っていてなにより。3作目にも出て欲しい。
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