回想シーンでご飯3杯いける

search/サーチの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
4.0
全編がPCの画面で構成されている事は勿論、それ以上に感心したのは、これまで映画の中では社会に対する悪影響という側面で語られる事が多かったインターネットやSNSを、善悪ではなく、僕達の生活の中に当たり前のように存在するものとして描いている事。

そういう意味で誘拐された女子高生が16歳というのも絶妙な設定で、21世紀早々に生まれた彼女は、My SpaceやFacebookといったSNSの草分けとほぼ同い年。つまり、人生最初のイベントである生誕から、入学、卒業、友人まで、全てがSNSありきで育った最初の世代なのだ。その辺りの経緯は、冒頭の約10分間で実に見事に要約されているし、この段階では、PCやインターネットは、家族の思い出を綴るツールとして、かなり好意的に描かれている。

だからこそ、僕達観客は、本作の画面に映し出されるSNSのページや、幾層にも重なったウィンドウを、まるで自分達の日常を見るのと同じ感覚で見てしまう。そこに警戒心は無い。マウス・ポインターが迷うように動く様子や、一旦入力した「!」を、少し考えてから消して「.」に変える事で、登場人物の心理を描写できてしまうのだという驚き。その見事な演出に、どんどん引き込まれる。

いや、しかし、よくよく考えてみると、スクリーンに映し出されたPC画面を構成する映像のいくつかは、実際には「カメラで撮影した映像をPC風に加工して挿入した」映像であるはずだ。例えばニュース映像を映すYouTubeの画面が何度も挿入されるが、勿論その映像も本作のために大掛かりに組まれたロケによって撮影されたものなのだ。そこを見据えた上で「ほら、この方がリアリティがあるでしょ」とPC風の画面に拘った作者の着眼点は凄いというか恐ろしくもある。

気が付けば15インチ程度の小さなPCの画面にこそリアリティとスリルを感じるようになってしまった僕達。果たしてこれは映画の可能性なのか、はたまた敗北なのか。様々な思いが頭の中を渦巻く作品である。