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町田くんの世界のHrtのレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
4.2
家のTVで声を上げて笑いながら観た。
現代の悪意に晒されざるをえない社会と人を映しながらもハートフルに描かれているところが琴線に触れる。
青春映画ながら10代だけに向けて作られていないのも良い。

まず目がいくのはフィルム撮影していることだ。
このジャンルの映画でデジタル撮影じゃないという点がまずフックになる。
そして観ていてその効果はすぐに分かる。
主に外で撮影されている本作、とにかく自然光が瑞々しく撮られているのだ。
デジタルではガチッと最適な輝度に処理されるところをあえて逆光にしてみたり、順光では役者がさらに輝いてみえる。
これは高校生のキャラクターたちを捉えるという理由でベストな選択だったと思う。

とはいえ10代の主要キャストは主演の細田佳央太と関水渚のみ。
あとは過剰な程に主演級の役者が脇を固めている。
「(大人の役者の方が)青春や高校生を対象化できる」と石井監督は言うが、役者たちのルックス的な若さやそうした演技で違和感なく主演2人と並んでいた。

作中では撤去寸前のプール、川辺のシーンが何度も登場し、雨の演出など水の使い方が印象的だった。
濁ったプールの縁での2人の会話。
終盤に町田くんが1人で掃除をし、そこに降り止まない雨の水が溜まっていく。
その後クライマックスを経て綺麗に透き通ったプールに2人が落ちてくる。
そうした一連のシーンは町田くんの心情を表象しているように感じた。
10代の心情表現として流動的な物質の象徴である水を使うことはとても的確なように思う。

2人がパワフルにただただ追いかけ合うカットは面白すぎると同時にとても眩しい。
あのカットだけでも何回も観てしまった。
ラストシーンの水面の美しさにも心が洗われる感覚があった。
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