このレビューはネタバレを含みます
「全て」
いつも、そう言いあってはハグをする仲のいい親子だったのだが…。
ほんの少しの日常からの逸脱が、一生の苦しみに変わる。
薬物は本当に怖い。
自分が苦しむのは勿論の事、自分の家族にも苦しみを与える。それが、慈しみ育てて来た我が子なら、地獄のように苦しい。
息子を信じて、何とか立ち直らそうと
父、デイヴィッドは身も心も削り尽力するが、何度も心が砕けそうになる。
その度に、昔、子供の頃の息子、ニックの思い出が胸をよぎる。
果たして、今、目の前のこの子は、あの可愛い愛しいニックなのだろうか?
ニックも、何度も立ち直ろうとするが、なかなか薬物の誘惑を絶ちきれない。
しかし、こうなってようやく父に胸の内をぶつけるニック。
家族は皆、優しく仲がいいが、自分だけは前妻の子であると言うかすかな違和感。自分が自慢の息子でなくなれば、父は自分に見向きしなくなるのではないか。そんな事はあるはずもないと思いながらも、かすかな恐怖は積み重なり、そのストレスは、やがて…。
「今の僕を丸ごと受け入れてよ!」
その言葉に、何とか息子に沿おうと努力するが、それは、息子を立ち直らせる事にはならず、そんな二人に、やがて周りの人間も疲弊していく。
薬物依存の家族の会のようなところで、
過剰摂取で、娘を失った母親の話が辛い。
「私は娘を亡くしました。しかし、生きている時から喪に服しているようなものでした。」
そして、デイヴィッドはニックに告げる。「助けられない。誰もお前を助けられない。」
子離れ。こんな辛い形での。
実話なので、現在ニックが立ち直っている事は判明しているが、辛い。本当に辛い話だった。