知人の結婚式で出会ったマモルに惚れて、肉体関係を結びながら彼が想いを寄せるすみれを紹介される等恋人とは言えない都合の良い関係に置かれるテルコ。同じ様に男友達ナカハラを都合よく扱う親友の葉子からの忠告を聞かない彼女が、仕事や私生活を犠牲にして一途に尽くす様を描いた角田光代の小説を原作にした今泉力哉監督作品です。
誰もがその言葉や存在、感情を知ってはいながらも、誰しもが明確な定義を行うことのできない「愛」という摩訶不思議な概念に力強く切り込んでいく恋愛映画となっています。例えば憧れ、例えば同情、あるいは性欲。愛は原始的なものから論理的、または哲学的なものまで様々な感情と思念が渦巻き絡み合いながら個々に形作られています。
複雑極まりないそれは人と人との関係性の中で、尽くすか尽くされるか、ギブ&テイクといった駆け引きで尚肥大化していきます。本作はもはや好き嫌いなどを超越して執念の域に達した愛を描いており、それは決して男女愛に限った話しではない、趣味や夢や理想にも共通する誰しもが一生を賭けて追及していくであろう普遍的なテーマです。