Hrt

愛がなんだのHrtのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.1
「幸せになりたいっスね」
「うるせえバーカ!」
に象徴されるように、人を好きな想いの前に幸福かどうかなんて関係ないのかもしれない。
特に主人公テルコは行き切っている。
普通って言葉はあまり使いたくないが、多くの人はナカハラの段階で止まるだろう。
自分含めナカハラに感情移入する人が多いのは意図的にそう仕向けられていると思う。
我々はテルコを理解できない。
テルコに寄り添える人もいるとは思うけど、少なくともそういう描かれ方はされていない。
ここが重要だと思った。
関係の機微に安易な共感をつけてしまうとこの作品で起こることが弱くなってしまう。
『愛がなんだ』というタイトル、「愛がなんだってんだよ!」と怒鳴るテルコ。
言いたいのはこれだろう。
言語化が難しすぎる。
でも恋愛の多様性を考えれば関係を言葉で表すこと自体がナンセンスだし、劇中でも彼らの関係に名前はつかない(強いて言えば「友達」くらい)。

(葉子に)いつでも呼んでほしいと言うナカハラ。
マモルとの同一化を望むテルコ。
どちらも自分のことは見えていなく、相手を「気持ち悪いw」と一蹴する。
それがとても愛しく思える。
動物園の象を眺めながら「33歳になって会社辞めたら象の飼育員になろう」と本気か冗談か分からないテンションで話すマモル。
その言葉を聞いて、劇中では唯一テルコが涙を流す。
幸せを感じる時に泣いて、傷ついたときは酒を呷る。
誰かをディスるときはラップ。
ラストカットで象の飼育をしているのは誰か。

自分がマモルのことを突き放せないのは、彼もテルコの側だから。
ある意味で同じタイプの人間同士、マモルも好きな人の為に必死だ。
無自覚な甘えや素直さがテルコを喜ばせ、傷つけもすること。
相手は違えど彼もそれをくらってる(または過去にそうだった)方の人だと思う。

追いケチャップ、テルコの頭を洗うシーン、あごトンなどイチャイチャするビジュアルも絶妙だった。
焼き芋を分ける2人、半分こしたマモルが紙袋に入った方をテルコにあげるのを見てホッとした自分がいる。

ナカハラの名前を検索し、自ら彼の写真展にやって来た葉子。
その後は分からないが、ナカハラと葉子にとって良い方向に向かうことを願った。
Hrt

Hrt