てっぺい

ランボー ラスト・ブラッドのてっぺいのレビュー・感想・評価

3.5
【逆殺人鬼映画】
勧善懲悪なのか、見る側の気持ちが揺らぐ映画。それほど主人公に降りかかる無慈悲さと、それにより発する彼の狂気が突出している。昔のシリーズだとナメてたら、気持ちをえぐられ持っていかれる。
◆概要
「ランボー」(‘82)シリーズ第5弾であり完結編。2020年6月26日公開。
脚本:シルベスタ・スタローンほか
監督:「キック・オーバー」エイドリアン・グランバーグ
出演:「ロッキー」シルベスタ・スタローン、「バベル」アドリアナ・バラーサ
◆ストーリー
グリーンベレーの戦闘エリートとして活躍していたジョン・ランボーは、祖国アメリカへと戻り、古い友人とその孫娘ガブリエラとともに平穏な日々を送っていた。しかし、ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致され、ランボーは娘のように愛していた彼女の救出に向かう。
◆感想
完全に逆殺人鬼映画。本来ならスカッとするはずの勧善懲悪が、やりすぎ惨すぎに見えてしまう、ある意味突出した狂気映画。でもそれが本作の脚本も手掛けたスタローンの表現したい事だというのだから、それを通して本作が伝えたかったことを感じたい。

◆以下ネタバレ

◆逆殺人鬼
もはや「SAW」やスプラッターものに通じるホラーな後半。バッタバッタとメキシコギャングが殺されていく様は、始めはスカッと、途中からその冷徹なまでの切り刻み方が残酷に見えて来る。ある意味立派な殺人鬼だと思う。
◆前半
むしろそれをいかに正常な気持ちで、つまりランボーに感情移入して見れるかを醸造するためにあると言っていい前半。ガブリエラの成長記録や落書きが刻まれた家でランボーは彼女を本当の娘のように愛し、そして彼女もランボーおじさんランボーおじさんと懐く2人の絆。そんな彼女が、ギャング兄弟から“俺らにとっちゃ、物だ”と廃人にされ最悪の死を遂げるのがもう見るに耐えない。ジョンが狂気と化すスイッチが、見る側にも痛いほど感じ取れる。
◆揺さぶり
そういう意味で、見る側の感情を頂天から闇の底までマックス揺さぶるシナリオ。感情を揺さぶって来る映画が好きな自分のような人にとっては、見た甲斐あり。それでも、地下洞に次々と仕掛けを張り巡らすランボーが怒りに満ち、どこか頼もしく見えるのに、実際にそれで人が切り刻まれていくのには目を覆ってしまうのだから不思議だ。
◆表現するもの
シルベスタ・スタローンは、「ランボーは本当に気が狂うほど怒っていると観客には感じてほしい。」と語っている。(https://screenonline.jp/_ct/17371879/p3)実際の戦争とは惨たらしい悪夢だという、この映画が表現したかったのは、本当の意味での暴力や狂気を知らない観客には理解しえない、もっと根深いもののような気がする。PTSDも抱える、ベトナム戦争帰還兵であるジョンの生き様を描く本作が単なる暴力映画でなく、戦争、もっと言えばその元凶である、理性を失った人の狂気を描く輪郭としてアウトプットされた、本作はそんな風に解釈できると思う。
◆トリビア
○副題は第1作の原題「FIRST BLOOD」のアンサータイトル。(https://gaga.ne.jp/rambo/)
○ランボーが弓を使う時、かつて一度も外していない笑(https://jp.ign.com/rambo-5/44771/feature/top10)

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