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THE GUILTY/ギルティのsomaddesignのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
5.0
映画館でヘッドホンして観たい。
ノイズ厳禁の環境推奨。

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過去に起きた事件のせいで通常の任務を解かれてしまったアスガー。いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、電話越しに退屈な事件に対応する日々を送っていた。ある日、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受けるアスガー。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは誘拐された女性を救うべく奔走する。

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なんか映画館の大きなスクリーンで見るのもいいけど、家でヘッドホンして音の隅々にまで耳を澄まして楽しみたい感じ。

ヒッチコックの「裏窓」以来、限定空間の電話サスペンスって傑作多いすね。思いつく限りで「セルラー」「フォンブース」「ザ・コール 緊急通報司令室」などなど。電話越しで相手の状況を想像するしかない上に、電話越しにやれることの少なさでスリルが増す感じ。

似た過去作と違って、電話先の様子が一切描かれず、指令室で孤軍奮闘するアスガーの一人芝居なのが特徴的。
退屈な仕事だと思って舐めてた仕事に意義を見出す過程で、警察官の本分に立ち返る姿も説得力あるし、一方でアスガーの過去の愚行や狂気が炙り出されるのがすごいし、
プロらしい毅然とした態度や判断と、被害者に親身に寄り添いたい気持ちで揺れ動く姿の対比も良かった。平和な指令室と暴力が間近にある誘拐の現場の関係も対になってるような。
そうかミステリーの「安楽椅子探偵」モノでもあるのか。


バナナマンの名作コント「ルスデン」を思い出しちゃった。残された留守電メッセージを相手に、日村さんが右往左往する一人芝居コント。相手側の様子がほとんど描けないからこそのサスペンスがとても良い。
時間がジャンプしなくて、上映時間と映画内の時間にズレがないので、一人芝居の舞台でも面白そう。

物語が全て終わってみると、近年のヨーロッパの移民問題や人種偏見や差別意識が透けて見えてくるあたりもすごい。犯罪率の増加や異人種間の摩擦が根底に流れてて、アスガーを通じて先入観の恐ろしさを追体験。独善的がゆえに自分の悪に向き合えない、自己正当化しちゃう自分に気づいてく物語にもなってる周到さ。


1988年生まれの新鋭、グスタフ・モーラー監督は今作が長編デビュー作というから驚き。デビュー作にして2019年のアカデミー賞外国語映画部門にノミネートされちゃった。ジェイク・ギレンホール主演でハリウッドリメイクの話もあるそうなので、主人公の狂気や国内事情も含めてより切迫した雰囲気でそうで楽しみ!(((o(*゚▽゚*)o)))


18本目
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