mrかっちゃん

斬、のmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
5.0
人を刀で斬るという極限のバイオレンスと
表裏一体で存在する性欲。
人間性を問いただしつつ、現代にも通じる人が人を殺すという負の連鎖が心に突き刺さる作品。

塚本晋也監督は「野火」で初めて知ったのですが、徹底したリアリズムな表現と生々しい暴力人体破損描写に圧倒されました。
監督として初の時代劇ですが、心に重く残る余韻は劇場を後にしても強く胸を打ち続けた。

刀のギリギリと刃が震える音、ブォンと真空を切る素振りの音。
物語に乗せて迫真の演技を見せる役者陣。
ハッとする斬新な演出。
短い尺の中にどうやってここまでのエネルギーと完成度を注ぎ込めるのか。
さすがです。

戦争のメカニズムをスマートにそれでも恐ろしく物語の中に取り入れて、頻発する猟奇殺人、突然襲いかかる強い憎悪を持ったテロリズム、近年で問題になっている事を時代劇でカモフラージュしつつも物語の中でしっかりと描いているところに唸らされた。
この作品の物語は、過去ではなく未来の話なんだろうと思う。
とても心に残る傑作でした。