足拭き猫

斬、の足拭き猫のレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
-
蒼井優の絶妙な塩梅の色気と金属音や肉が切れる音に圧倒された。体調が悪くていけなかった爆音映画祭で上映されていたのはこういうことだったのか。そして今回、映画館が爆音そのものだったのでラッキーだった。

「散り椿」では時代劇が板についてなかった池松壮亮も今回は違和感なく。2度繰り返される「ぼくは死にませんよ」という言葉は、実際に殺し合いになったら意思とは関係なく両方が傷つくのだと気付かない平和な答えで、初めて現実を突き付けられてもなんら対処もできず頭で考えるだけだったと。でもそれが途中までは貫かれたのは、ある意味誠実だったということなのかも。

自分を助けてくれた強者である塚本晋也になびいてしまうシーンが刀の怪しい煌きとあいまって蒼井優がエロくて最高だった。というかあの凄惨な殺し合いを目の当たりにしてもなおそのような気持ちを持ってしまう魔性の女っぷり。

画面に何でもない野っぱらが出てくると一瞬緊張が緩むが、そこは俳優たちの力で視線が物語に戻ってくるのはさすが。設定は時代劇だが中身は現代というのは塚本監督が「股旅」に影響されたらしいと知ることができたのも良かった。