ぎー

凪待ちのぎーのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
3.5
【白石和彌特集4作品目】
・白石監督には申し訳ないけど、まさかのエログロ一切なしのヒューマンドラマ映画だった。普通に良い映画。凄い人が成功したり失敗したり、陽の目を見てないけど努力してる人が成功したり、ダメな人が成敗されたりする映画はいっぱいあるけど、この映画はダメな人が失敗や裏切りを積み重ねながらも再起の希望を抱かせる、極めて現実的な、新しい着眼点の映画だった。結果的にダメダメな人の日常を描く場面が多いのでやや刺激に欠けるところがあったのは事実だけど、見終わって救われたというか、思うところが滅茶苦茶ある映画だったな。
・改めて白石監督が凄い人だなって思った。どの映画もすごいけど、エログロの刺激をけっこう上手く使ってるって思ってたけど、それら無しに普通に良い映画を撮っちゃってた。
・衝撃だったのが香取慎吾の演技。ぶっちゃけこれまで演技派っていうイメージは全くなかった。この映画での演技は素晴らしかったと思う。

※以下、映画の内容について
・主人公の木野本は決して悪人じゃない。なんなら善人の類。なのに人生が転落していく。ダメダメではある。女にはだらしなくなさそうだけど、酒とギャンブルに圧倒的にだらしない。なんなら欠点はそれだけ。にもかかわらず、家族や周囲の人を巻き込んでいっちゃう。中毒性があるものって本当に怖いな。
・奥さんの亜弓は悲劇の人。ちょっと一言多いけど、滅茶苦茶良い女性。ちょっと一言多いだけ。
・この映画のキーパーソンは亜弓の父だったと思う。色んなことを経験した人生の終盤だからこそ、達観していて、ダメダメな木野本に手を差し伸べることができた。「俺の倅だ」っていうセリフはクソ格好良かった。
・亜弓の元夫も悪人じゃない。かなりコミュニケーション不器用だけど。
・リリーフランキーが犯人だろうなってのは途中から何となく分かってた。でも、どうして殺害に至ってしまったんだろう。
・木野本が亜弓の父が船を売って作ったお金を全部ギャンブルに賭けた時は流石にムカついた。でも、依存症ってそういうことなんだろうな。
・これだけ絶望的な状況で救いがなくっても、自分を大事に思ってくれる亜弓の父と娘がいるだけで幸せなことだと思えた。救いのある映画だった。
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