えいがうるふ

凪待ちのえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

凪待ち(2019年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

つい最近ネットで見かけた依存症啓発漫画で「イネイブリング」という言葉を知った。イネイブリングとは、依存症者を手助けすることでかえって依存症の回復を遅らせてしまう周囲の人間の行為のこと(厚労省e-ヘルスネットより)だ。依存症が原因で人に迷惑をかけたり借金を背負ったりした人間に対し、良かれと思ってその尻拭いや肩代わりをしてやることは、本人を支えるどころか当事者として問題に向き合うことを回避させ、結果的に同じことを繰り返す手助けをしてしまうことになる。
私はたまたまその実例を割と身近に見て育ったので「情けはクズの為ならず」を家訓にする勢いで肝に銘じて生きてきたのだが、それが実際に精神医療の現場で依存症治療の鉄則としてされていることを知って我が意を得たりと思ったものだ。

で、この作品だがギャンブル依存症の郁男はどこへ行っても彼を甘やかす心優しきイネイブラーと縁が切れない。これではとても更生は無理だろうという希望の見えない主人公のクズぶりを延々と見せられた挙げ句、案の定どうにもならない。救いもカタルシスもない。

じゃあこの作品はどこを見ればよかったのだろう。
そもそも、いらない台詞と要らない演出が多すぎた。

「郁男は、自分のせいでお母さんが死んだと思ってるんだ」
(そのようですね)

「俺はクソだ。大バカもんだ」
(そうですね)

見れば分かるセリフをわざわざ言わせるのは、役者の演技の力量を信頼できなかったのだろうか?まーその気持ちは分からんでもないが・・・ってキャスティング本末転倒(呆)

香取慎吾の演技はなかなかよかったと思うが、そこまで大絶賛されるほどとは思えず、従来のイメージと異なる役柄を演じている物珍しさでかなり加点されている気がした。ファンにとっては確かに面白いだろう。

郁男の悪い病気の「発作」が出る度に繰り返される映像表現もなんだか漫画ぽくて、しまいにはコントのお約束のようだった。
末期がんの親父さんも大変元気で一向に入院もしないし闘病してる様子もない。その他ツッコミどころ満載。

大好きな作品もある監督だけに期待しすぎてしまった。ショボーン。