いの

マチネの終わりにのいののネタバレレビュー・内容・結末

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます



『マチネの終わりに』
原作は、新刊の頃に借りたものの、数ページ読んだところで進められなくなり、返却期限が迫ってきて図書館に返したという記憶あり。(でも、今年読んだ、平野啓一郎の『ある男』は、私にとっては本当に面白いと思う本でした。)突然、この映画を観てみようという気持ちになって。


とても美しい石田ゆり子は、終始、理想のオトナの女性の振る舞い方をする。分別があり、自制がよくきき、仕事への情熱もタフさも、同僚への配慮もカンペキ。非の打ち所がない。決定的な、驚くべき打ち明け話をされたあとでも、怒りを相手にぶつけない。やり場のない感情を、相手にぶつけない。だからこそ、そのあとで、歩道に置かれた石の上に座って、子どものように泣きじゃくる姿に、胸をうたれる。私もふいに感情をおさえきれなくなった。それまで、とりわけ、感情移入などしていなかったのに。

そのあと。桜井ユキが、あふれそうな涙を必死にこらえて、笑顔さえ浮かべながら、「あなたは貴方の好きなようにして(好きなように生きて)」と言う。涙をこらえる桜井ユキの代わりに、私が涙をこらえきれなくなってしまった。自分で自分を許せずに過ごしてきたであろう日々。犯した過ち。観客がそれを裁く必要などない。私もきっと同じようなものなんだろう。泣かせてもらって良かった。それはきっと、今の私に必要な涙だったのだろうと思うから。


数年前のフランスでの相次ぐテロが、物語の軸のひとつとなっていくけど、映画はそれを、単なる演出の道具として扱ったりしない。そのあたり、この映画のオトナの態度も良いと思う。(レフン作品を観るようになってから、エレベーターが登場すると、これは何か意味があるのだろうかと反射的に考えるようになってしまった。)


あらすじだけ追うと、彼らのしていることは、JK映画の物語と大差ないように感じる。(JK映画のほとんど知らないのに、印象だけで語ってごめんなさい。)だけど、いくつになっても、人の行為は、そうそう変わらないのかもしれないし。


ギターの音色が優しくて悲しくて、自分の悲しみを包み込んでくれ寄り添ってくれているように感じる。同僚の女性が、ギターの演奏によって、固くぎゅっとしていた心がほぐれていくのもいい。そして、ギターの音色が、この映画の質を上へと押し上げている。🎻


「未来は過去を変えることができる」
本当に、その通りだと思う。そのことを想起させるようなラストでもあった。私は、彼ら2人のその後を想像する。


幸福の硬貨が差し出されたら、そして私がそれを受け取ったなら、さあ、何を買おうかな。いや、答えは決まっている。(例えばね、、、いや、それは内緒にします。いやいや、例えばなんてない、ただもったいぶっただけ💦)
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