うるぐす

岬の兄妹のうるぐすのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
4.1
片田舎で、貧しく生きる二人の兄妹。
足に障害を抱える兄と、知的障害者の妹。
仕事をリストラされ、どん底にまで落ち、明日の命まで見えない日々。
限界を超えてしまった兄は、
障害を持つ妹を連れて男に尋ねる。
「いい子いるんですけど、1万円でどうですか?最後までオッケーです。」

観客の胸ぐらを掴んで、揺さぶりながら、倫理や正義を問う、
狂おしいほどにまっすぐで純粋な映画。

観てる間、多分ずっと顔はいびつに歪んでいた。
ここに映るのは、フィクションのはずなのに
どこかにある現実のように思えたし、
自分が同じような状況だったら、と考えてしまうし、
ずっと、自分の中に巣食う嫌な部分と向き合わざるを得なかった。
二度と観たくないと思う。
でも一度は見るのがいいと思う。
こんなにも内側をえぐられる映画に出会えることは
幸運なことだと思うから。



えげつないのは、
童貞の、いじめられっ子の高校生を相手にして、
「生きてるといいことあるんですね」って言われるシーンの前に、
友人に「妹になんてことさせてんだ。それでも人間か?」と言わせるシーンを入れてるとこで
「偽善者め」って言い放った主人公を僕たちは簡単には否定できない。

きっとそう。
見出しだけに踊らされて誰かを攻撃したりしてしまいがちだけど、そうじゃなくて、ちゃんと見る。
そうすることで、簡単に否定することを、
簡単に攻撃することを、
やめられる。
そうすると、不思議と希望は見えてくる。
湧いてくる。
生きる。がむしゃらでもみっともなくても。
それこそが希望。

とんでもない映画でした。
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