ロカ

7月22日のロカのネタバレレビュー・内容・結末

7月22日(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ほんの数年前にノルウェーで起こった、あまりにも酷い事件。
たまたま居合わせてしまった被害者たちが味わった苦痛と恐怖、また多くのノルウェー国民が感じたであろう恐ろしさと不安を思うといたたまれない。
こんなことは絶対にあってはならない。

この事件は、実際のところ、民族対立や移民問題から発生した類のものではないように思われる。
真の問題と原因はもっと別のところにあるのではないか。
つまり、あまりにも孤独で過度に攻撃的になった人間が、自分の鬱屈とした思いを発散するためだけに起こしたに過ぎないのではないか。
そうでなければ、なぜティーンエイジャーを虐殺しながら「エリートめ」などと悪態を吐くのか。
夢と希望を抱いた幸福そうな若者が、羨ましく憎らしかっただけではないのか。
また、政治家や右翼活動家といった、自分が一目置く“大物”に注目されたい、支持されたいといった心理もあったのだろう。

犯人は自分の家族についての事実を正確に認識していないように思える。
もしくは、実態は最悪なのに、特に問題がないかのように装っているように見える。
これは子供の頃から現在に至るまで、自分の抱える痛みに向き合えていない表れではないか?
だから鬱屈とした気持ちが、本来の対象(家族あるいは自分自身の人生)から離れ、面白くなく思うもの(移民と左派)や嫉妬を感じるもの(幸福そうな若者)にベクトルを変え、暴発したのではないか。
この方向転換に犯人自身が無自覚だから、冷静に、常軌を逸した犯行に及べたのではないか。

あのように理不尽で悲惨な目に遭っても、互いを思いやり、前に進もうとする被害者たちのような強さが、もしほんの少しでも犯人にあったなら、こんな事件は起きなかったのかもしれない。
ただ個人的に思ったことですが。
あんな風に卑劣に人を攻撃しても、もともと哀れだった犯人の人生が一層惨めになるだけだ。
残念なことに、日本でも理不尽な殺人事件が起こることがあるけど、同じことが言えると思う。
無関係の他人を傷付けても、得るものは何もない。
たださらに惨めになるだけだ。
ロカ

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