GreenT

HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツのGreenTのレビュー・感想・評価

2.5
アメリカ版DVDのジャケが(笑)。見てもどんな話なのか全く想像できない!

この映画は、内容を知らないで観た方が面白いと思います。シャラメ・ファンは必見!!

シャラメが演じるのは、冴えない引きこもりのティーンエージャーのダニエル。父親が死んだ年の夏、ケープコッドに住むおばさんのところで夏休みを過ごすことになる。ケープコッドは金持ちが避暑にくるところで、Townie(地元民)とSummerbirds(観光客)という階級の違いが見られるような観光地。若者もそうで、金持ちの息子が地元の女の子をパーティに呼んだりとか、そういうカルチャーが見られる。ダニエルは、地元の子ではないが金持ちの観光客でもなく、居場所がない。

このオープニングでやたらと「背景は、1991年!!」っていうアピールがすごい。それも、誰だかわからない13歳の男の子のナレーションで語られる。

ダニエルは友達ができなくて一人でドライブイン・シアターに行くが、そこでマケイラという、町中の男の子が憧れる地元の女の子と知り合いになる。

こんとき、ドライブイン・シアターに掛かってる映画が、『裸の銃を持つ男2 1/2』『シティ・スリッカーズ』『ロケッティア』(笑)

この辺までは、ダサい男の子がひと夏の経験をする、みたいな映画を期待するところなのだが、ダニエルはハンターという、地元でも有名なドラッグ・ディーラーのワルとも知り合いになる。このハンターの人物紹介をするティーン達の演技がすごい下手で、この辺で一度「失敗した!」って観るのやめようかと思った。

しかしダニエルがハンターに「俺もドラッグ・ディーラーになりたい」と言うあたりから、話が『ハート・ブルー』とか、そんな感じになってくる(ちなみに『ハート・ブルー』は1991年の映画!)。それでちょっと興味を惹かれる。

ダニエルは飲み込みが良くて、ハンターよりも大胆に商売をして、ものすごい大金を稼ぐのだが、ここのシャラメが『ビーバス&バッドヘッド』と言うか、『ビル&テッド』と言うか、「Dude!」みたいな喋りが上手くて、結構笑える。でもメタルヘッドともちょっと違くて、あの頃流行ったトミー・ヒルフィガーのストライプのポロシャツとか着てた、有象無象の高校生みたいな(笑)

で、だんだんクライム・スリラーみたいになってきて、監督はタランティーノとかスコセッシとか、あの頃スタイリッシュだったバイオレンス・ムービーみたいのをやりたいみたいなんだけど、そういうカメラワークとか、ちょっとイラッとくる。やりたいことはわかるけど、全く賛成できない(笑)。

アレックス・ローって子が演じるハンターは、「冷血なワル」とかって紹介されてるけどカリスマがないし、マイカ・モンロー演じるマケイラも、「街一番のセクシーな娘」っていう割には華がない。本当に、シャラメだけで映画を引っ張ってる。

で、ハンターとマケイラは兄妹なんだけど、色々事情があって別々に暮らしていて、話もしない。けど、ハンターは、マケイラと付き合う男は「殺す」みたいに言ってるんだけど、なんでそんなに過保護なのか、動機がわからない。

マケイラに惚れて付き合い始めるダニエルも、ハンターが人を殺したのを見たことがあるから、バレたら殺されるとばかりに怯えるんだけど、ハンターにそんなカリスマがないしな~。

青春ものからクライム・スリラーになっていくところが意外で、だから内容知らないで観た方が面白いことは面白いんだけど、同時に「最初どういう話だったっけ?」って、最初の30分はなんだったの?!という感じもする。ダニエルの父親が死んだとか、そういうのも全く回収されないし、Townie(地元民)とSummerbirds(観光客)の格差とかも提示されるだけで物語に盛り込まれないし。

1991年を背景にしたことも特に生かされていない。映画は『ターミネーター2』も出てくるし、1991年に公開になった映画にこだわっているけど、サウンドトラックが90sだけじゃなくて70sとか、50s~60sとか、全然90年代臭がしない。

DVD特典のインタビューで、監督は小さいとき夏だけケープコッドに行ってて疎外感を感じたこと、大学時代にマリファナ売ってた、ワルとダサいやつという釣り合わないコンビの同級生がいたっていうこと、これらを1991年にケープコッドを襲ったハリケーンに組み合わせたら面白いと思って脚本を書いたと言っていた。

後、メイキングを見ていたら、明らかに「もう一つのエンディング」があって、そちらの方がまだドラマ性があって良かったんじゃないかと思った。まあでもどっちでもあんま変わらないかな。エンディングも誰だかわからない13歳の男の子のナレーションで終わるんだけど、このナレーターが全くの第三者っていうのがすっごい「?」って感じになる。

iMDbのユーザー・レビューを見ると、私と似た意見の人も多いけど、「プロット雑だけど、雰囲気が好き!」って感じのサムズアップも結構あって、監督のイライジャ・バイナムの監督デビュー作らしいから、新人のぎこちないところがツボに入る人もいるのかも。
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