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記憶にございません!のTSのレビュー・感想・評価

記憶にございません!(2019年製作の映画)
3.7
【最悪の総理が記憶を失ったら?】78点
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監督:三谷幸喜
製作国:日本
ジャンル:コメディ
収録時間:127分
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2019年劇場鑑賞54本目。
普通に面白かったです。三谷幸喜監督の作品は当たり外れが大きいイメージですが、今作は政治風刺が効いていて面白かったです。最初からコメディ風でいくよと宣言してるようなものでしたので、多少粗い展開がぶっこまれても許せる。まあこれを大真面目に描いてしまったら、お国からNGが出てしまう可能性もあったのでは。最初になにかの団体をモデルにしているわけではないと注意書きが示されますが、確信犯以外の何物でもなく、現在の日本政府へのメッセージとも捉えられます。

第127代内閣総理大臣である黒田啓介は「憲政史上最悪の総理大臣」と言われていて、ある時の演説で投石事件に見舞われる。入院をしていた黒田だが、政界に入ってからの記憶が一切思い出せないというのだが。。

記憶にございません。という言葉は小佐野賢治がロッキード事件絡みの時に放った言葉であり、大変無責任な言葉であります。こんな言葉で全てまかり通るわけではありませんが、これを国会中継などで見せられると、「何をしてるのだこの国は」と思わずにはいられないでしょう。今に始まったわけではありませんが、国会中に居眠りをする議員など、我々はこの国のために税金を払う価値があるのだろうか、と思わされる部分があります。こんな感じでは、子どもが将来政治家になりたいと言うことはなくなってきます。本作にはいろんなメッセージが含まれているのですが、このあたりが最大のポイントなのではないでしょうか。政治家になりたいという子どもが全くいない国ほど虚しいものはないです。とある人物が現代日本人が思っていることを的確に言い放ちます。この国は平穏なのですが、何かと問題だらけ。そして平穏がゆえに、自分からそれを変えてしまうことを恐れます。だから何も変わらない、政治家たちも今あるタスクをこなすだけという思考停止状態になっているのでしょう。

黒田首相は記憶を失ってから人が変わったように政治を進めていきます。現実的な政策が出ることはありませんが、K2プランなどの失笑してしまう政策は出てきます。こんなもののために税金を払ってるのかと思うと、本当であれば怒りがこみあげてくるでしょう。政治学を完全に忘れてしまった黒田首相は小学校の時の先生に政治を教えてもらい、この国を変えていこうとしていきます。

僕もこれを見て少しでも政界について詳しく知るべきだと思いました。情けながらそこまで詳しいと胸を張れません。国民が何も知らないうちに、政治家はどんどんいろんな策を繰り出し、悪い方向にいけば破滅の道を辿るのかもしれません。今作は難しい話は抜きにして、日本の現代政府を揶揄した作品であり、笑いながらも日本の政治について少し考えさせられる作品です。三谷監督も、完成してからこれを安倍首相に見せたようでして、これはなかなか勇気ある行動です。今週は7本見て挽回しましたが、これが一番良かったです。
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