半兵衛

恐怖の報酬 オリジナル完全版の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.2
前半は危険なニトロを運搬する人物描写が浅いし物語も平板なので少し落胆したが、中盤石油が炎上して地獄と化すところをガチでやらせる場面からフリードキン流の殺伐としたアクション演出が炸裂して、気づいたときには地獄の運送を頼まれたわけありな男たちによる底辺のサスペンスが本当にボロい橋でトラックを走らせるなど容赦ない演出に終始息を呑むことに。登場人物たちもみなピリピリしていて、何かあったらすぐ一触即発の状態になる関係性のため見てるこちらが耐えられなくなるが、だからこそ一瞬仲良くなる二人にもたらされる悲劇がやるせなくなる。

フリードキン監督はリメイク元であるクルーゾー版のポイントを外さずになおかつ自分流のスタイルを調和させて製作している印象、でも忠実というわけではないという絶妙なライン。

タンジェリンドリームのシンセサイザー主体のスコアが緊張感のあるドラマと絶妙にマッチしており、登場人物たちのささくれた心情を一層強調する。

ロイ・シャイダーの表情が効いたオリジナルとは違う終わらせ方も心に残る、そしてそこからのほろ苦いラストとエンディングの音楽とカメラワークのタイミングが完璧。
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