NAO141

恐怖の報酬 オリジナル完全版のNAO141のレビュー・感想・評価

3.8
〈不屈の執念で甦った伝説の作品!!〉
〈本物だからこその迫力!!〉

完成から〈完全公開〉まで約40年もかかった伝説の作品。監督はアカデミー作品賞を受賞した『フレンチ・コネクション』やホラー映画でありながら記録破りの興行成績を叩き出した『エクソシスト』で有名なウィリアム・フリードキン。

『恐怖の報酬(原題:Sorcerer)』は、ジョルジュ・アルノー原作&アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督で1953年に公開された同名フランス映画(原題:Le Salaire de la peur)に大きな影響を受けたウィリアム・フリードキンが再映画化に挑み、3大陸5ヶ国でのロケを敢行、製作費に約2,000万ドル(当時破格)、完成までに2年もの歳月をかけた超大作…だったのだが、(運悪く)同年に公開された『スター・ウォーズ』の爆発的ヒットにより、映画界の潮目が一気に変わってしまう(つまり大コケ)。宇宙を舞台にした壮大な物語に対し、南米のアマゾンを舞台にしたハード&バイオレンスな本作は観客に敬遠されてしまい、批評家にもクルーゾーのオリジナル版との違いを指摘されまくり。散々な結果となる…。

その興行的な大惨敗の上、本作を海外で上映するにあたり、配給会社はなんとフリードキンに無断で作品の再編集を行って、約120分の公開版を30分削って約90分にまで短縮してしまう(…酷い)。その後、作品はソフト化と絶版を繰り返し、権利関係の問題もあって日本では長らく完全版を観ることは出来なかった。しかしウィリアム・フリードキンの自身の作品に対する愛と不屈の執念は凄まじく、ズタズタに切り刻まれてしまった自身の作品を見事に復活させ、〈オリジナル完全版〉として2013年にヴェネチア国際映画祭で公開、日本でもやっと2018年に完全版を鑑賞する事が出来るように!(ただただ監督の執念にあっぱれ)。
※1977年:米国公開
※1978年:日本公開(短縮版)
※2018年:日本公開(オリジナル完全版)

本作は南米を舞台に、それぞれの事情から逃亡してきた4人の男が、どん底から這い上がるためにトラックでニトログリセリンを運ぶという危険な仕事へと志願する姿を描いたもの。正直作品としては地味な点も多く、前半はそれぞれの人物を描く意味で重要だとわかっていながらも、やや退屈感は否めない…。しかし、爆発シーンもカーチェイスからのクラッシュシーンも全て本物。CGがまだない時代の作品だからこその良さがある!CGや派手な演出に慣れてしまった我々が忘れていた〈本物の迫力(リアル)〉というものを本作で味わう事が出来る!

本作を観た人の誰もに強烈な印象を残す〈豪雨の中でのトラックで吊り橋を渡るシーン〉。このシーンは実際に吊り橋を建設して撮影の上、本番とリハーサルでトラックはなんと5回も転落したという。そうまでして撮影したシーンはやはり圧巻!!このトラック、インカの神様?のレリーフに似せてフロントが作られていることも相まって、吊り橋に揺られるトラックが、まるで意思を持って動く怪物のように見える点も面白いのだが、吊り橋から転落しそうになりながらも必死に渡りきろうとするトラックが、自身の作品をズタズタにされながらも完全版上映を諦めなかった監督そのものに見えてしまうのは私だけだろうか笑。執念と本物の凄さが詰まった作品、まだ観てない方はぜひ!!
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