NAO141

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのNAO141のレビュー・感想・評価

4.2
トム・クルーズの凄まじいアクション!〈還暦〉を過ぎてなお超人的なアクションを魅せる彼には毎度驚かされっぱなしである(*_*)。60代に見えない…笑。

今回のアクションも撮影そのものも凄すぎる。予告編で何度も観た〈断崖絶壁からの大ジャンプ〉。山の側面に設置した特設の傾斜台をバイクで思いっきり疾走し(ちなみにカスタムメイドのホンダCRF250)、そのまま約1200メートル下の渓谷へ落下しながら途中でバイクを乗り捨て、地上から約150メートル地点でパラシュートを開かなくてはならない…。一歩間違えば即死であるが、このシーンのためにトム・クルーズは15ヶ月にも及ぶ準備期間を設け、スカイダイビングのための厳しいトレーニングと計500回以上にもなるジャンプの練習を実施(…唖然)。メイキング映像を観るとこのシーンの凄さがより理解出来る。そしてこのシーン、実は脚本が完成する前の本作撮影〈初日〉に敢行されている。それは前作『フォールアウト』でトム・クルーズがビルからビルへ飛び移るシーンの撮影で骨折し(あれは本当に痛そうだったよね…)、それにより撮影がしばらく中断したことを踏まえ、今回のこの崖からの大ジャンプがもし失敗したら大事故必須であり、それまで撮った映像を無駄にしないための配慮なのだとか(トム・クルーズ大事故で作品そのものがお蔵入りになる事を回避しようとしたわけだね)。そうまでして大ジャンプがしたかったトム・クルーズ笑。彼のCGに頼らず、ロケ地で〈本物の映像〉を実写する事への拘り、役者魂、プロ意識、流石である!
大ジャンプ時には脚本が完成していなかったという事からもわかる通り、このシーンが無事に成功した事によって、脚本が後付けのように作られていくという展開もなかなか面白い。

アクションだけではなく、アラブ首長国連邦〈アブダビ〉では、撮影当時はまだ建設中だった世界最大の新しい空港ターミナル〈ミッドフィールド・ターミナル〉をなんと貸し切って撮影している。
さらには物語終盤の機関車のシーン、こちらもなんと撮影のためにわざわざ製造した上で走らせて、役者はその機関車でアクションを行い、最終的にその機関車を谷底に落とす…実際に笑。つまり、あのシーンも本物である。危険なアクションを行い、巨費を投じ、無謀ともいえる事をやり続ける。こんなハチャメチャな事をプロデューサーは何故止めないのか…それはトム・クルーズ自身がプロデューサーでもあるからだ笑。〈リアルを追求する男〉のチャレンジは終わらない笑。

さて、本作はタイトルが〈PART ONE〉とある通り、次作〈PART TWO〉とセットで1つの作品となるシリーズ初の2部作である。イーサン、ガブリエル、ホワイト・ウィドウ、キトリッジ達の駆け引きを存分に楽しめる作品となっているが、注目すべきはガブリエルと共闘しているのが〈AI〉だという事。「暴走するAIを止めることが出来るか」という事が本作の軸にあるが、〈ChatGPT〉などの生成AIが問題になっている現在、この設定はタイムリーであると言える。本作を製作中の2020年頃はまだ〈ChatGPT〉など騒がれていない時期だったが、そのタイミングで今回のような内容の作品を製作するとはなかなかの先見性。本作の日本プレミアムが中止になってしまったのもトム・クルーズが所属する組合がストライキを行ったからだが、その理由に〈AIの活用制限〉が含まれていることからもわかる通り、〈AI〉はいま我々にとって脅威にもなりつつある。本作でも脅威として描かれる〈AI〉だが、〈AI〉の活用やCGが多用される時代だからこそ、本シリーズでのトム・クルーズの〈リアルを追求する精神〉がより活きてくるような気がする。『ミッション:インポッシブル』というシリーズはスパイ映画として面白いだけではなく、〈生身の人間の可能性〉というものに果敢に挑戦し続けているシリーズだと思う!最高だね!
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