もはや地球の物理法則そのものに闘いを挑んでいるかのような渡橋シーンは一見の価値あり。どうやって撮り上げたのか本当に理解できない。写実的かつ即物的なイカれ描写が次々に繰り広げられるが、最後は主人公の憔悴をテクニカルに視覚化した心理表現に落ち着いてしまいガッカリ。ひとりひとりの背景に時間を割いたわりには、その後の展開にあまり活きてこないし、クルーゾー版のように人物の対立や交感も起こらない。振り返ってみれば、あきらかに新婦がDVを受けているにもかかわらず粛々と進行していく結婚式のシーンがいちばん異様だった。
