最初から似た者同士なら好きになっていない。
少しずつ似ていかないとダメなんだ。
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アニエス・ヴァルダの処女作。
ゆっくりと時間が過ぎていく。
陽だまりの温もりや海の潮の香り、
人々の雑多な息遣いが、
白黒の画面にくっきり映る。
小さな港町の、昨日と今日を、
一つの夫婦の明日が通り抜けていく。
毎日散歩ばかり、
形而上学的に愛を語り合う姿は、
穏やかなラ・ポワント・クールトには
ちっともそぐわない。
でも気にしない。
二人はゆっくり時間をかけて、
歪にも積み上がって重荷になった愛を崩していく。
海は汚染されていて、
それでも町の人々の生活にぴったりくっついてる。
相互依存は、
怠慢にも、ゆっくり関係を退廃させていく。
緊急ではなく緩やかに、
ずっと遠くだけれど確かに、
大きな問題が待っているような気がする。
そんな取り返しのつかなさに勘づき嘆き混乱する女に対して、
男の語る愛なんてものはどうも軽すぎる。
でもその無頓着さが寧ろ安心を呼ぶのなら、
それが一緒にいる理由になるのかもしれない。
感情で叩きつけずに、
ゆっくり崩した愛を、
二人はまたゆっくりと積み上げていく。
今度はうまくいくと思う。
完璧な形にはならなくても、
ずっと良くなると思う。
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猫と日陰の波が印象的。
ニューシネマパラダイスのアルフレッドの若き姿には
父の若い姿を見たような気持ちにもなって、
少しこそばゆいような、
嬉しいような。