ぐるぐるシュルツ

ラ・ポワント・クールトのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
3.9
最初から似た者同士なら好きになっていない。
少しずつ似ていかないとダメなんだ。

〜〜〜〜

アニエス・ヴァルダの処女作。
ゆっくりと時間が過ぎていく。
陽だまりの温もりや海の潮の香り、
人々の雑多な息遣いが、
白黒の画面にくっきり映る。

小さな港町の、昨日と今日を、
一つの夫婦の明日が通り抜けていく。
毎日散歩ばかり、
形而上学的に愛を語り合う姿は、
穏やかなラ・ポワント・クールトには
ちっともそぐわない。

でも気にしない。
二人はゆっくり時間をかけて、
歪にも積み上がって重荷になった愛を崩していく。
海は汚染されていて、
それでも町の人々の生活にぴったりくっついてる。
相互依存は、
怠慢にも、ゆっくり関係を退廃させていく。
緊急ではなく緩やかに、
ずっと遠くだけれど確かに、
大きな問題が待っているような気がする。

そんな取り返しのつかなさに勘づき嘆き混乱する女に対して、
男の語る愛なんてものはどうも軽すぎる。

でもその無頓着さが寧ろ安心を呼ぶのなら、
それが一緒にいる理由になるのかもしれない。

感情で叩きつけずに、
ゆっくり崩した愛を、
二人はまたゆっくりと積み上げていく。
今度はうまくいくと思う。
完璧な形にはならなくても、
ずっと良くなると思う。

〜〜〜

猫と日陰の波が印象的。
ニューシネマパラダイスのアルフレッドの若き姿には
父の若い姿を見たような気持ちにもなって、
少しこそばゆいような、
嬉しいような。