純

マイ・ブックショップの純のレビュー・感想・評価

マイ・ブックショップ(2017年製作の映画)
4.0
曇り空の下で、味方でいてくれるひとのことを思う。好きだとか、大事にしたいだとか、そういうこころがぼろぼろにされることは暴力なのに、どうしてかなわないんだろう。抵抗という名前を持った正しさが負けても、平気でその敗北を「正しさ」と呼ぶのなら、もうそんな恐ろしい場所に、わたしの大事なものを置いてはおけない。

意地悪なひとというのはどこにでもいて、でも小さな村の中だからこそ、その意地悪が一度力を持つと、厄介なのかもしれなかった。我慢することは努力することとは同義ではないから、大切なものや自分自身を守るために自分で新しい場所に向かうのは、それこそ正しい逃げなのだと思う。

どこまでも意地悪な人々がいる一方で、ちゃんと自分の哲学と品を大事にできるひともいて、そういうひととのふれあいが、こころをゆっくり、やさしく、ほぐしてゆくのでしょう。丁寧なことば。うつくしい所作。生きるための炎を宿した、凛とした瞳。

愛するものを誠実に愛する眼差しが、海を渡っていく。

(原題のThe Bookshopを、日本語にするにあたってよりわかりやすくMyをあてたのは個人的にいいなと思った。決してA Bookshopではないんだもんね。)
純