ケビン

楽園のケビンのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
4.0
しんどい。語弊を恐れずに言うなら、とにかく自分の嫌いなものが詰まりに詰まってて、本当に吐き気がするぐらい嫌な映画(もちろん良い意味で)でした。

舞台は限界集落ですが田舎特有のものというわけでは決してなく、おそらく今この瞬間も、どこにでも起きていることであり、なのにその異常性に気付いていない人があまりにも多いという恐ろしさがゴリゴリに描かれていました。


「あいつがあの時こうだった。」
「あいつはあそこに住んでるから怪しい。」
「俺たちがなんとかしなければ。」

のような、この程度の印象や思い込みで人は正義を振りかざして暴走できてしまうのが恐ろしい。

誰もが早くわかりやすい答えが欲しいから、複雑に絡んだ真実なんてどうでもよくて、ただただ自分たちに都合の良い真実をでっち上げてしまう。

あまつさえ、たとえそれで無実の人が死んでも自分に責任なんかないと思っているし、喉元過ぎれば結構さっぱりと忘れてしまうし、本当に根深い。最悪ですよ瀬々監督…苦笑

こういうTHE 村社会みたいなのって結構今の日本社会にも根深く残っているし、いろんな形で見聞きする人も多いんじゃないでしょうかね。

「楽園」の解釈は人それぞれ色んな解釈があると思いますが、個人的にはこういう村社会構造そのもののことなのかなと感じました。

自分たちに都合の悪いマイノリティなものを徹底的に排除して、自分たちに賛同するものだけで構成された社会というか。想像するだけで気持ち悪いですけどね。

この映画はそういう「楽園」であぐらをかいて生きている人にこそ、普通のサスペンス映画と勘違いしてうっかり見てほしいところですが、たぶんそういう人ってこれだけ突きつけられても自分のこととは気付かない可能性が高いんだよなぁ。

でもこの映画をきっかけに、身の回りで起こっているかもしれない異常性に気づく人が1人でもいれば、この映画の意義を十分果たしているのではないかと思いました。
ケビン

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