このレビューはネタバレを含みます
瀬々監督と吉田修一さんらしい作品。
このおふたりの世界観が好きな方にはおすすめの映画。
1画面に収まるY字路。
そのどちらかに行くかで人生が変わった2人を主軸に、他の人々の思想、行動が二手に分かれ続けた結果の物語。
「差別をするのか」
「差別をされるのか」
民衆の声により壊された善次郎
少女の何気ない一言に動かされた豪士
多数決による正義、個人の恨み、悪意のない純粋な声
差別はどこにでもある。それが集落という閉鎖空間で行われたらどうなるか。
「どこに行っても同じだよ」と言った豪士
「ここじゃないどこかに行きたかった」と東京に出た紡
失踪事件当時、豪士と紡が別のY字路を歩んだ時から道が続いているような気さえした。
豪士の母自身は前の場所に囚われず自分の道をみつけ息子のことも
「あの子の楽園はあそこじゃなかった」
と気づいてしまっていたこともさらに悲壮感を濃くさせた。
一見お互いに興味がなく冷たく見える東京も「差別」という議題をあげると個々のものであり、集落という民衆性のある大きな思想に比べたらなんでもないようにさえ思えた。
Y字路は進み続ければ元の分岐は見えなくなる。紡には今まで選んできた道を戻ることなく前に向かって歩き続け、僅かな希望を紡いで言って欲しい。