slow

ストリート・オブ・クロコダイルのslowのレビュー・感想・評価

4.5
少年は不思議な夢を見ていた。埃とカビのにおいが漂ってきそうな廃工場のような空間で、童子が一人遊びをしている夢だ。それはその少年の過去だったろうか、全くの他人だったろうか。面影は何ひとつとして重ならず、しかし、一冊の本のように、背を繋がれた感覚がある。時を同じくして、くたびれたスーツに身を包んだ男が迷い込む。いや、男は訪れたのかもしれない。その必要があったのだろう。男はとある仕立て屋の評判を聞きつけ、遠路遥々やって来たのだ。いや、やはり男は迷い込んだのかもしれない。少年は不思議な夢を見ていた。目覚めるまでずっと。目覚めてもずっと。

ここに書くことは妄想であり、事実とは全くの無関係です。わたしはこの映画をリー・マックイーンが見た夢、として観た。映画は1986年のもの。それは16歳のマックイーンがテーラーで働き始めた頃だ。後のアレキサンダー・マックイーンのショーの雰囲気に、どことなく似ている本作の世界観。そして、仕立て屋の登場。もしマックイーンが子供の頃に見たこの夢のイメージを(もしかしたら劇中の子は彼だったかもしれない)、次々と現実のものにしていったのだとしたら。もしこの夢がデザイナーを志すきっかけだったとしたら。自分にとっては、そんな夢みたいな妄想捗る作品だった。単純にストップモーションアニメとして観ても素晴らしい。影響を受けただけあってヤン・シュヴァンクマイエルとも近いけれど、このクエイ兄弟の方が、より世界が深く立体的な印象を受けた。原作のある作品とのことなので、ここに書いたことは何の知識にもなりません。本作の正しい内容を知りたい方は、そちらをどうぞ。
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