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グリーンブックのNMのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
爽快で愉快さもあるストーリーで人気が高い作品。一方繊細なテーマなので批判もある。

60年代。
屈指の有名ピアニスト、ドクターことドン・シャーリー。全土で大人気。

黒人である彼が、敢えて差別の厳しい南部にツアーに出ることに。

元ナイトクラブの用心棒で腕っぷしが強かったトニーは、それを見込まれツアーの付き人に採用された。
もともとトニーはイタリア系労働者で、かなり黒人差別をしていた。
はじめは黒人に仕えるなんてとスカウトを断るが、養うべき大家族もいるし、高待遇に承諾。

二人の旅が始まる。

トニーの運転は荒く、言葉は下品でイントネーション等もおかしい、ものの食べ方は汚く、そもそも仕事に対する姿勢が不誠実、子供の頃からウソと出任せで生きてきたしそれが悪いとも思っていなかった。

僧侶のような聖人のような優雅で高貴なオーラを放つドク。菩薩様のよう。
そんな彼が豪邸を出て、正反対のトニーと車内で長時間を過ごす。
トニーは煙草はエンドレスで吸うし勝手にドクのサンドイッチは食べちゃうし、くだらない話を延々している。

彼の行動を嗜めるドクの品位と知性が素晴らしい。
理屈で勝つのでもなく高圧的に命令するわけでもないのに、反論できないような物言いが見事。

いよいよ南部。VIPのドクでさえあちこちで差別される。直接的な差別はもちろんだが、やたらじろじろ見るとか、あらゆる店に交渉の余地なく入れてもらえないとか、ホテルもトイレも粗末な黒人専用のもの。

黙って耐えるドク。
トニーも流石に気の毒になってきた。給料のこともあるが、元来単純な性格でもあるし、自分がドクにちくちく攻撃するより、彼が受ける重大な差別のほうが気になるようになってきたのだろうか。
何度もトラブルに遭う。
癇癪を起こすトニーを諌めるドク、そしてドクのピンチに助け舟を出すトニー。
乗り越えるうち、徐々に親しみを増していく二人。
特にひたすら寡黙だったドクが、様々な事実が明らかになり、態度も少しずつ変化していく様子が素敵。

別に社会を変えられるわけじゃない。
しかし一石投じることはできたかもしれない。
ラストは現実的で大げさでなく、好みだった。

歴史的に不正確な部分があるとか、白人が典型的救世主であるストーリーには黒人含め批判的意見もあるらしい。


メモ
・ショパン/エチュード イ短調 Op.25-11 「木枯らし(Winter Wind)」。 超難曲としても有名。
・ピメントチーズ(pimento cheese)南部料理で、チーズ、マヨネーズ、ピメント(辛くない唐辛子の一種)から作られるスプレッドもしくはレリッシュ。パン、クラッカーや野菜に添えたりサンドイッチに挟んで食べる。ピメントチーズ・サンドイッチはプロゴルフのマスターズ・トーナメントの名物。
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