ぐりこ

グリーンブックのぐりこのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.7
アカデミー賞を受けて観てきたその2。
1960年代の南部アメリカを白人のドライバー兼用心棒トニー(ヴィゴ・モーテンセン)と黒人のジャズピアニストドク(マハーシャラ・アリ)が旅をする、実話ベースのロードムービー。
グリーンブックとは、差別が色濃い南部アメリカを黒人が安全に旅するためのガイドブック(だそうだ)。

この二人、イタリア系の白人だが粗野で下品なトニーと、黒人だが上流階級出身で知的で上品なドクという新鮮な取り合わせで、アイロニカル。

一方で、最初はまったく噛み合わないように思えた二人が、旅を続ける中で友情取り合わせ信頼を育んでいく、というのはお決まり。
しかし、ツアーがディープサウスに入っていくとドクは厳しい差別と不条理に直面することになる。はっきりいってこのあたりの差別描写は胸くそ悪い。

トニーとドクは、正反対の二人だからこそのコンビネーションですお互いを補いながら困難を切り抜けていく。
基本的にはドクが受ける差別からくるトラブルをトニーが解決するパターンだが、終盤2度目の警察沙汰ではトニーが起こした問題をドクが解決するという流れは象徴的だ。

クライマックスは、差別に“NO”を突きつけて最後のステージを蹴って、場末の黒人バーで即興のジャズセッションを演奏するところ。胸がすくシーンだった。
相当ピアノを練習したというアリの運指にも注目。
最後のクリスマスのシーンは、完全に想像どおりの終わり方だっあけど、これはこれで素敵な予定調和だと思えた。トニー嫁の「素敵な手紙をありがとう!」がいい。


PS. しかし、この作品のオスカー受賞には米国内で少なからず批判があるらしい。
いわく「安易な白人救世主像」「差別を過去として描いており、現代には差別などでないかのよう」等々。
なるほどなぁ、今もレイシズムは有形無形で潜んでいるし、かの国には差別発言も厭わない大統領がいて多くの国民に支持されている。
感動したけど、頭の隅には置いておきたい批判だった。
ぐりこ

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