二式

ジョーカーの二式のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
バットマンの設定を上手く取り込み、バットマンシリーズの一作として文句なしではあるけど、今作はアメコミ映画の皮を被ったアメリカンニューシネマ。今の時代の「タクシードライバー 」で大傑作。

貧富の差が激しくあれ荒んだ街のニューヨークをモデルにしたゴッサム。その中で精神的な病を抱え、貧困に喘ぎ、誰からも見向きをされず、ただ人に馬鹿にされながら悲劇ともいえる負の連鎖を生きるアーサー。どんよりとした暗い展開は見ていて心苦しい。救いの手は差し伸べられず落ちていく中で、人生は喜劇として悪の道化師ジョーカーに覚醒していく様はやばいカタルシスがある。あのジョーカーをリアルな存在として感じ、肩入れさえしてしまう脚本は上手すぎる。「タクシードライバー 」みたいに変な影響を受ける人が現れてもおかしくないと思うぐらい。凄い。

何よりホアキンフェニックスの演技が異常。色々と設定が盛り込まれて、ものすごく複雑な人間性を持ったアーサーを実在感ある人物として演じきっている。精神的な病を持ち、悲しみや怒りを心に隠し笑い続けるときのなんとも言えない表情。自身の怪物性を露わにする時の別人の顔。ジョーカーへと少しずつ変貌していくときにする奇妙な踊り。他の役者のジョーカーとは全く違うクレイジーさには悲しさと恐さがある。ホアキンフェニックスの演技が、この映画のクオリティを何倍にも上げている。映画史に残る名演と思う。

アーサーが悪いのか、社会が悪いのか。荒れた社会の弱者のカリスマとしてジョーカーが崇められる姿は、今の社会に通じるものがある。
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