ひでG

ジョーカーのひでGのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
「キャロル」や「ララランド」か恋が始まる瞬間を映像化して見せてくれた事と反対に
本作は「人が悪に堕ちていく」時を、
これでもか!これでもか!というくらい私たちに突きつけてくる!

今年一番疲れた映画鑑賞だった。

「衝撃」とか「驚愕」なんて言葉さえ上っ面に撫でている気がしてしまう、ホアキン・フェニックスの演技!

うまい!とか、凄い!なんてのを超えている。

簡単には受け止められない!
スクリーンから投げつけられる彼の感情の揺ぎを!

あんなに悲しくて、怖くて、哀れな笑い声を今まで聴いたことがない!

これはバットマンの悪役ジョーカーのスピンオフ作品である。

つまりアメコミ映画の流れなんだけど、
僕は激しく今の日本を意識してしまった。

ジョーカーはアメコミ映画の中だけなんだろうか?

NO!
具体的な名前は控えるが、日本でも通り魔的な無差別犯罪はもう珍しくない。

彼らもきっと映画の主人公のように、
孤独と劣等感の極地にいたに違いない。

もちろん、だから犯罪者やジョーカーに同情している訳ではない。

本作の作り手は決してこんなに不幸たったから殺人マシーンに陥って可愛そうだとは描いていない。

だからこそ、観客は途方もない無力感に苛まれるのだと思う。

今の社会、幸いなことにジョーカーはまだ稀だが
アーサーはたくさんいるのではないだろうか。

私たちの社会がゴッサムにならないと断定できるだろうか。

映画はまずニュース映像としてゴミ収集が出来なくなった町の様子を流す。

そのあと明らかに投げやりに対処する市のケースワーカーとアーサーとのやり取りを映し出す。
ケースワーカーはやがて、この仕事は市財政の悪化でなくなることを彼に告げる。

社会が、為政者が、弱者対応や公共のことを軽んじた時、ゴッサムは現実の街となるのだろう。


同業の障害者や病床の母親に対しても優しいアーサー

でも、電車で子供をあやすことも禁止させるアーサー

彼の希望と現実のあまりにもかけ離れた日々。

ここからはネタバレです。







アーサーが母が関係した?大金持ちに出会うシーンに映し出されていたのがチャップリンの「モダンタイムス」

金持ちに、僕はあなたのこどもだ!と訴えに行ったのに、チャップリンに酔いしれるアーサー。
なんたる、皮肉。
一方は喜劇で世界を平和にして、本当の笑いを提供した天才。

一方、アーサーは彼が喜劇を口に出しても、劇中、彼の言葉に笑う人は、小児科の子供も含めて1人もいない。

なんたる哀れ、なんたる残酷!


中盤、こんなアーサーなのに、なぜ彼女ができたのだろう?と訝っていたら、、、
そーだったのか!
ここはほんと鳥肌が立ったわ!

僕らが狂気の演技として記憶しているのが
「タクシードライバー」のデ・ニーロ。
彼を撃って、世に一気に悪の象徴として出て行くのも凄い巡り合わせ!

とにかく、これを本年度ベスト1にしていいのか?アカデミー作品賞にしていいのか?という躊躇はあるものの、
決して後世まで忘れ得ぬ作品であることには違いない。


終わった後、あまり映画をみなれていないようなカップルの女の子が
「ちょー暗い!」て嘆いていたけど、
その通りなんっす。
どうぞ、覚悟して観に行ってください。

あー、まだ何か書き足りない気がするわ(^_^;)
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