フレンチコアおじさん

ジョーカーのフレンチコアおじさんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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本作のジョーカーである主人公アーサーは道化師の仕事で生計を立てながら、コメディアンを夢見ている。これは初めて見るのでオリジナル設定なのだろうかな。

ゴッサムシティという巨大な特権に仕える”宮廷道化師”にも関わらず、批判も弁明も許されず、信じていた者には裏切られ、次々と梯子を外されたアーサーはどん底に堕ちていく。
しかし、ふとしたきっかけで起こした事件が道化師の姿をした彼をカリスマに押し上げ、不平不満の溜まった人々を知らぬところで大規模に煽動していってしまう。
思えば本作のオープニングではゴミ収集員によるストライキのニュースのラジオ音声から始まっていた。
ごく一部の特権に仕える道化師であるはず我々は不平不満を主張してもそれは届かず、聞き入れてもらうことは叶わないのだろうか。

2011年にアメリカで吹き荒れたオキュパイ・ニューヨークのニュースにおいて、国の全資産の約35%を僅か1%の人々が所有していると言われてたが、さて2019年の現在では最低以下の生活を強いられてる人々との差は埋まったのか。
本国アメリカでは、公開時に作品を見て同調した人々による暴動を危惧して厳戒態勢が敷かれてたというニュースを見たが、確かにこれは見て怒り狂う人が出てきてもおかしくない。
カリスマの象徴でもあるピエロのマスクを被った民衆の大暴動の場面は、2005年の作品Vフォー・ヴェンデッタを強烈に想起させる。

もうひとつは1976年のタクシードライバーだ。これには監督も明確に言及している。
腐敗しきった俗世に対してイラつきを募らせた主人公トラヴィスがテロを実行しようとする話だ。こちらでも主人公は計らずも世間からは英雄となってしまうのだが・・・
ジョーカー作中においてもタクシードライバーからのオマージュ的シーンがいくつか見られる。
あの有名な「you talkin' to me?」をオマージュしたであろう、アーサーがテレビショー出演のためにイメージトレーニングで一人芝居を始める「knock, knock」のシーンは特に顕著。

あと、キングオブコメディへの言及もされていたようだが、あいにくこちらは未見。理解を深めるために後日に必ず見ることにしよう。

とにかく衝撃過ぎる問題作だった。これはえらいモンが世に放たれてしまった。
しかし問題作だからといって無視できない、直視するべき内容を孕んでる。
確実にアカデミー賞レースに食い込んでくるだろうけど、それが元でまた大変なことになりそうな気もする。




基本的にスコアはつけない方針でしたが、文句なしの5.0。(でもスコアは記録しない)