まっどまっくすこーじ

ジョーカーのまっどまっくすこーじのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
アメコミ原作の皮を被った社会派哲学的作品。
重く激しい波動が観る者の心を抉ってくる。

観賞後にやりきれない気持ちになる映画は「デトロイト」のような実話ベースが多いが、本作はアメコミ原作でそれをやっている。
だからある意味、リアルを超えている。

創作だからこそ犇々と訴えてくるものがあるのだ。
そして社会への警鐘を不気味に静かに鳴らされたまま突き飛ばされるのだ。

善悪は主観によって変化する…
それを実体化してしまった本作は危うい薫りで満たされている。

そんな本作を構築しているほとんどはホアキン・フェニックスの演技であろう。
役作りや動作だけでなく台詞、特に笑い方などはホアキンでなければ本作のジョーカーにはならなかっただろう。

今後ソフトが出ても、日本語吹替で観たら駄目なやつである。
そういえば本作はスクリーンに全体的に青緑の空気がざらつきながら漂っているような絵なので、この雰囲気はテレビのモニターでは再現は難しいと思われる。
自宅でプロジェクターで観られる恵まれた方は別として、本作はスクリーンで観られるうちに観たほうが良いと思う。

ホアキンの話に戻すと、同じジョーカーでも「ダークナイト」のヒース・レジャーとは求められているものが違うと思うので比較するのはナンセンスな気がする。
演技で較べるならば「タクシードライバー」のデニーロだろうと思う。
そのデニーロが共演しているというのはキャスティングの妙であると思う。

とにかく本作のホアキンにはやられた。
複雑でとても言い表せられないが、観ている間ずっと私の心に囁きかけてきたので、観終わってホッとしたくらいである。

しかし私を含め、このジョーカーに感情移入してしまった人は大なり小なり心を病んでいると思う。

敢えて言おう。

この映画を観て、好きになれない人が多いほうが社会的には安心だ。

それでも私はひとつの映画作品として本作は語り継がれるべき名作であると言い切るのである。

とりとめのないレビューで申し訳ない。
でも、このような作品をどう伝えれば良いのか私には難し過ぎる。
もっと書きたいことはあるのだが…

ただ、是非観て頂きたい。

人間社会に渦巻く傲慢と弱者の怒りは実存する。
人間の本質は斯くありたいという理想を求めるのも良いが、綺麗事ではない現実の人間社会は…
そこに一石を投じた問題作。

さて、貴方の主観では本作をどう捉えるのであろうか……