こたつむり

ジョーカーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.9
♪ 真実なんてものは僕の中には何もなかった
  生きる意味さえ知らない

映画の感想は日記の延長線。
と思う僕は不届き者でしょうか。
でも、その日の体調、心情、環境で評価なんて容易く変わるもの。洋画の場合、吹替か字幕かの選択でも変わりますからね。絶対的な評価など存在しないと思うのです(と書きつつも「絶対的な名作」なんて表現をしちゃうのですが。ぐふ)。

だから。
言い訳するわけじゃあないのですが、先入観を作らないようにしようとしても「評価が高い」という噂だけはシャットアウト出来ず。それを踏まえた感想になるのも仕方がないのです。

で。
結論として面白い作品だとは思いました。
誰にも必要とされていない男の狂気が街中に染みていく…そんな情景を鋭利な効果音でギギギと心を切り裂いていく物語。確かに見応えがあります。

そう。
本作は「悪が生まれるまで」の物語。
だから、世の中を醜く描くのです。鈍重で殺伐とした世界に救いはなく。どんよりと足元に漂う不穏が主人公をズリズリと追い込んでいくのです。

でもね。
世界の全てをそれで言い表せる…とするならば逆に“軽い”と思うのも事実。確かにヒーロー映画として考えるならば、現実を単純化して捉えるのは間違いではないのですが…。

しかし。
主人公を演じたのはホアキン・フェニックス。
彼の比類なき存在感が物語に説得力を与えました。あの“浮き出たあばら骨”は簡単に真似できません。正直なところ、彼が演じていなければ…とても軽い物語になったことでしょう。

まあ、そんなわけで。
虚構という檻の中で主人公が暴れたことで底が抜けた物語。沈んだ先に遺されたのは哀しき道化。ジョーカーという役柄で収めるには勿体ないキャラクタでした。

ただ逆に言えば。
重いように見えて実は軽い物語が巷で評判…その事実が一番恐ろしいのです。本作に共感する、あるいは同情的になる…それは世の中が間違った方向に世の中が進んでいる…ということですからね。だから、本作を否定する意見が大切なのだと思います。
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