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東京喰種 トーキョーグール【S】のよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

3.0
『美食家(グルメ)』と呼ばれる喰種の被害が頻発する中、半喰種の少年カネキ(窪田正孝)は『ピエロ』という喰種集団のメンバーであるイトリ(知英)から取引を持ちかけられる。『カネキが半喰種になったきっかけ(=リゼの死)は仕組まれたものであった』この情報と引き換えに『喰種レストランの情報』を『美食家』から聞き出すようにと唆される。


◆新キャラとキャスト交代の続編

石田スイによる同名コミックを実写化した作品。前作に引き続き、原作『東京喰種』における『喰種レストラン』のパートが描かれています。今作のキーパーソンは『美食家』と呼ばれる作品内でも屈指のサイコパスである月山習(松田翔太)くん。数多くの変態的名言を残す自己陶酔型クソヤロー。

冒頭から人気ファッションモデル(マギー)の自宅マンションに侵入してお食事を始めます。彼女の持つオッドアイに惹かれた彼は、生きたまま彼女の両目を抉りだし、視神経を摘んでそのままモグモグ。前作のPG12指定からR15+指定にレートが上がっただけある映像でした。

前作では食い扶持に困り『食事』に苦労する喰種たちが描かれていた反面、美食家は目玉だけ食べてあとはポイ。フードロスも甚だしいですが、彼が真に恐ろしいのは頭のネジがぶっ飛んでいるからではなく、食事にこだわりを持てる程に実力・財力・社会的地位があるからだということが推し量れるシーンでした。

出だしは上々、作品を通して素晴らしい変態演技を魅せていた松田翔太でしたが、個人的に一番楽しみにしていた『トレ!!!ビアンッ!!』がウィスパー系で恍惚系の『トレビアン...!!』だったのでズッコケました。劇場版の月山習は支離滅裂感と勢いがやや控え目なスマート系HENTAIさんでしたね。『Be Cool. フラットに行こうじゃないか。』って自分に言い聞かせてましたもんね。


前作でヒロインのトーカちゃんを演じた清水富美加が(やんごとなき事情がおありとの事で)降板。今作では山本舞香がヒロイン役を引き継いでいました。ビジュアルは良くなったと思いますが、演技の面が随分と酷くなってしまったと感じているのは僕だけでしょうか。人間の友達である依子(森七菜)と絡むシーンがありましたが、尺は短いのに完全に食われてました。喰種が人間に食われているところなんて初めて見た!


◆『命をいただく』という普遍的なテーマ

食物連鎖の上では人間よりも上位種である喰種ですが、そんな彼らの暮らしぶりが人間と比べて如何に過酷なものであるかは前作で描かれていた通りです。

︎︎︎︎☑︎ 他の喰種との縄張り(喰場)争い
︎︎︎︎︎︎☑︎ 喰種対策局の捜査官による喰種狩

︎︎︎︎︎︎☑︎ 人を狩って捕食することへの葛藤

『鬼滅の刃』に登場する人喰い鬼とは違い、喰種が誕生した経緯については明かされていませんが(原作『東京喰種:re』まで読めばわかるのかな?)、彼らのココロは『人喰』に適した造りにはなっていないようです。

︎︎︎︎☑︎ 人間しか食べられないこと。
︎︎︎︎☑︎ 人間の食事は摂取出来ないこと。

上の特性に加えて、『捕食器官と驚異的な身体能力』を差し引けば人間と変わらないという喰種。つまり、自らが生きる為とはいえ、『自分と姿形が似通ったヒトを自ら殺めて捕食することは、強烈な精神的負荷が掛かる』そうなのです。お皿に乗って出てきた肉を食べる人間とは異なり、自ら命を摘み取らねばならない喰種。社会性や情緒といった人間と変わらない精神構造は、肉食動物として生きていくには重すぎる十字架のようでした。

人間以上に幼い頃から命と向き合ってきた喰種だからこそ、ココロが耐えきれず防衛作用の様に命を軽んじる個体が多いと説かれていました。やはり本作、ただの人喰いダークファンタジーではないですね。

最後は人間と喰種の共生の可能性を探ろうみたいな小綺麗すぎるまとめ方になっていましたが、まぁここまでは原作の通りなので映画版がこのラストであることに文句をつけますまい。


文句を付けたいのは『ピエロ』のみなさん。原作通りですが、文句をつけさせていただきます。すんごい含みのあるカットを半ば無理矢理ねじ込んできましたけど、これって続編あるんですか?企画倒れした時に恥ずかしい思いをするだけなんだから、こういう含みを持たせたエンディングは止めておけとあれほど...。