みかぽん

プライベート・ウォーのみかぽんのレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
3.8
Filmarksの試写会で鑑賞。

スリランカ内戦では爆風に飛ばされて左眼の視力を失い、アフガニスタンでは紛争者が定める国境を越える時、当然のように銃を向けられる。
「我々は医療ボランティアだ」と偽るが、不審から声を荒げる兵士。目を閉じて両手を上げ、最悪の結末を覚悟して震える同行カメラマンとドライバーの隣で、彼女は兵士を冷静に見据え、「医療器具は既に送られているから此処にはない」と、差し出した身分証(実はスポーツクラブの会員証)の返却を待つ。
メリー・コルヴィンの腹の座り方は半端ない。バレたら即、銃殺は間違いなしの状況をかようにくぐり抜け、更なる最前線へと赴く。

華やかで平和なロンドンの中心で、それを存分に味わいつくそうとしても、得体の知れない不安は予測なく我が身に絡まり、ふとした隙にそれが大波となって全身を覆いつくす。その恐怖からの回避ツールとして煙草は手放せず、酒を飲み尽くし、人肌の中へと逃げ込む。
これらを打ち負かし、また物理的にも引き離してくれるであろう絶対的なカード – 自身の子供 – も過去に切望したが、二度の流産で叶えられず、末期的状況にある恋人に再びこの望みを伝えても、彼女の年齢を理由に軽く遇らわれる…。

彼女が引き寄せられるように紛争地へ舞い戻れば、絶望や嘆き、恐怖や死が支配するその世界の中で誰よりも抜きに出て記者としての使命を存分に果たせてしまうし、実はちゃんと功名心があったりするのも結構人間臭い。しかし圧政を敷かれ、犠牲を強いられている罪なき人々を憂い、その側を絶対的に支持し、それを世に知らしめることは自身を戦地を向かわせる最大のモチベーションだ。

昨日隣に居た友は、今日は亡骸となって横たわる。
カダフィ大佐に舌鋒鋭くインタビューを行ったその後日、この独裁者は遺体となって晒され足蹴となる、そんな姿を見下ろす日常。
映画、戦場のピアニストの主人公が彷徨い歩いた、あの色を失った圧倒的な廃墟と同じ風景の中を、見えない殺戮者の的となりながら、しかも丸腰のままで走り抜け、記事を、声を世界に配信し続けた一人の女性、マリー・コルヴィンの十二年の軌跡に終始、圧倒させられた。

追記)
戦場に場違いなラ・ペルラの高級下着を身につけていることをカメラマンのポールに指摘されると、死体を掘り起こされた時に感銘を与えたいから、と笑うコルヴィン。
これにはある部分で同感。というのは、僭越ながら私も「この下着は万一、交通事故で病院に搬送された場合には絶対に恥ずかしいからアウト」なんて、捨拾決定の時に有事を思い浮かべますもん😅
そして勿論、普段こんな高級品など身につけませんが💦 でも、ラ・ペルラは友人の結婚祝いにプレゼントしたことはあります。当然、値段によってピンキリはあるものの、レースのクオリティーにマッチするデザインは美しく芸術的👙です)
みかぽん

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