にしやん

ザ・ネゴシエーションのにしやんのレビュー・感想・評価

ザ・ネゴシエーション(2018年製作の映画)
3.7
初の悪役のヒョンビンとソウル市警のエリート交渉人役のソンイェジン共演の犯罪心理サスペンスもんや。

この映画、はっきり言うて、見どころは「ネゴシエーション(=交渉)」や無く、「俳優」やったわ。ポスターには 「画面越しの対峙、互いに一歩も引けない世紀の交渉始まる」って書いてたさかい、「交渉」に期待したら、そこは全然大したことなく、どっちか言うたら「交渉」は肩透かしばっかりで、「交渉」とは全然関係ないところで話が進展していくわ。じゃあつまらんかと言えばそうでもなく、そこそこおもろいねんな。

普通「交渉人」の映画っちゅうたら交渉人殆ど失敗せえへんのに、本作はまず交渉人が仕事に自信を無くしてることもあり不調続きで、バンバン人が死んでまうさかい、最後までどっちに転ぶか分からんスリルがある。犯人に「お前交渉人向いてへん」とか言われとうしな。これ自体ちょっと新しいかもや。それに、話に結構伏線が張られてて、後になって、ああそうなんやっちゅう脚本の良さもあるな。韓国映画よう観てる人やったら、まあまあ、ある程度の筋は読める(実際わしはだいたい読めた)かもしれんけど、展開自体にスピードがあるから、いろいろ深読みする前に、「ハイ、次のシーン」になるっちゅうんは、演出にもテンポがあってええわ。

この映画は前述の通り、ストーリーよりもやっぱり「俳優」やわ。ヒョンビン、ソンイェジン二人に、どんな役でも自分のもんにしてまう演技力と存在感がある。とにかくどのシーンかて絵になんな。この二人を観てるだけでも、そこそこ最後まで持つわ。それと、何ちゅうても忘れたらいかんのは、キムサンホや。誰って思うかもしれへんけど、韓国映画で三枚目の役でちょこちょこ出てくる「電撃ネットワーク」の南部みたいな髪型のオッサンや。「交渉」の表舞台の裏側で事件の真相を暴くべく独り外を駆けずり廻るキーパーソンをやっとる。それに、ストーリーの緊迫感をそがへん程度の、彼の小ギャグかて結構冴えてるわ。このオッサン相変わらずええ味出しとんなあ。このあたりの緩急のつけ方かて上手いわ。

ストーリーをいかにおもろくするんかをとことん追い求め、終盤はエモいところに強引に話を振っていった結果、結局ネゴシエーションってどうでもええんちゃいますん?になってるし、なんか話の辻褄も合わへんのちゃうんって最後はなってしもてたけど、観ている間はヒョンビン、ソンイェジンはもちろん、キムサンホや、観た瞬間にワルやと分かるチャングァン等の俳優陣がしっかりええ仕事やってるおかげで最後まで緊張感途切れへんし、まあこんなもんやろと妙に納得してしもたわ。

それに、警察やとか国家保安院やとか軍やとか国家の組織がごちゃごちゃ出てくるんもコリアン・サスペンスらしいねんけど、その組織のしがらみやとか図式みたいなもんが、こんなむちゃくちゃな話でも、なんとなくリアリティやスケールを醸し出してるとこも抜け目がないな。

おもろいんっちゅうことをとことん追求した脚本に、しっかりとした俳優陣を固めて作ったら、そんな大した予算が無うても、そこそこおもろいもんができるっていう典型的な映画や。最近の韓国映画はこういうんが実に上手いわ。邦画界も韓国のええとこはちゃんと見習ってほしいもんやわ。
にしやん

にしやん