てっぺい

アド・アストラのてっぺいのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.5
【アナログ近未来映画】
月面にサブウェイ⁉︎現存するもので表現される、いわばアナログな近未来宇宙が逆にリアル。「インターステラー」継承の映像美を楽しみつつ、通して描かれる“孤独”が心にズッシリとくる一本。
◆概要
アメリカのエピック・SF・スリラー映画。出演は「ファイト・クラブ」のブラッド・ピット、「メン・イン・ブラック」シリーズのトミー・リー・ジョーンズ、「アルマゲドン」のリブ・タイラーら。監督は長編監督デビュー作「リトル・オデッサ」('95)で第51回ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞のジェームズ・グレイ。撮影監督は「インターステラー」のホイテ・バン・ホイテマ。プロデュースをブラッド・ピット率いる製作会社PLAN Bが担当。
◆ストーリー
宇宙飛行士ロイの父は地球外生命体の探索に旅立ってから16年後、太陽系の彼方で行方不明に。ある時ロイは軍上層部から父の生存の事実、また父が太陽系を滅ぼしかねない「リマ計画」にかかわっている事を知らされる。父を捜すため、ロイも宇宙へと旅立つが……。
◆感想
圧倒的な孤独の物語。仲間たちとの間でも心の距離を取り、解き放たれる宇宙空間では生物すら皆無の中、主人公の心の機微が描かれる。他の宇宙SFものとは一線を画す、リアルな近未来の世界観も見もの。
◆近未来
地表からそびえ立つ超高層の宇宙ステーション。月面に人類が移住、サブウェイまである、近未来の世界観がまず見もの。月面でカーチェイスまでやってしまうSF映画なんて見たことない笑。宇宙空間で見つけた生命研究船の中で遭遇する宇宙猿(?)も迫力があった。共通するのは、他の宇宙映画と違い、あまり前衛的すぎず、今あるものの延長というか、いわばアナログな近未来の映像表現をしていたところ。それだけにまたリアルさも増していたと思う。
◆映像美
名作「インターステラー」の撮影監督がチーム入りしているだけに、宇宙空間の映像美も見もの。体一貫で宇宙ゴミの中を飛ぶシーンなんて見た事ないし、宇宙ステーションから地表へ落下する、ロイ目線の回転映像には心底足がすくんだ。本物の黒を体感できるドルビーシアターで鑑賞できたなら、どれだけ感動が深かっただろう。

◆以下ネタバレ

◆孤独
冒頭、宇宙ステーションで鼓舞してくれる仲間に“俺に触るな”と心中叫ぶロイが、映画で終始描かれる孤独の物語を暗示していたようにも思う。乗組員とも結果分かり合えず、最終的に一人孤独で宇宙空間を彷徨うなんて、映画の話とはいえ想像を絶する。
◆演出
「クワイエット・プレイス」ばりに映画館で身動きが取りにくい笑、ほど映画全体が静寂。火星でロイが入れられた部屋も、壁面に映し出される色とりどりの生命体が逆に無機質だったし、ロイが抱える孤独の表現に対して、演出に色んな手が加えられていたと思う。
◆自分探し
家族よりも宇宙研究を取った父。そんな父を蔑みながらも、妻と別れ宇宙に没頭し、結局父と同じ道を辿るロイ。孤独という点で、この映画では父とロイが共通する描かれ方だった。その点で、父を探して宇宙を彷徨うロイの姿は、父探しと同時に自分探しをしていたとも思える。ラスト数秒、前妻を迎えロイがやっと見せた笑顔が表しているのは、この映画を通して笑顔を見せることのなかったロイがたどり着いた真実であり、見つけた自分自身だったように思う。
◆モヤモヤ
本作を見る中でどうしても邪魔だったモヤモヤ。発車中のシャトルに外から侵入できる?父の船を簡単に見つけすぎ?海王星から生還なんて可能?丁寧な説明が必要な描写が割と多かった事が少し残念。

いずれにしても、テーマが明確だったし、“アナログな近未来”が余計にワクワク感を掻き立てる。変に地球外生物が現れてごちゃごちゃもしなかったし、宇宙SFものとして見やすい一本ではないでしょうか。
◆トリビア
○タイトルはラテン語で「星の彼方へ」の意。
○ グレイ監督や共同脚本を務めたイーサン・グロスは、「地獄の黙示録」(1979年)や「2001年宇宙の旅」(1968年)を参考にした(https://mantan-web.jp/article/20190921dog00m200029000c.html)
○ 宇宙空間は、ブラッド・ピットがハーネスをつけて、約9メートルの地点にぶら下がり、カメラがその状態の彼を見上げるように撮影した(https://www.oricon.co.jp/news/2144976/full/)
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