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アド・アストラのHrtのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
4.4
地球から離れるほどに意識は自分の内へと向かっていく表現。
ブラッド・ピットの抑制の効いた演技が素晴らしくて瞳の動き一つで彼の心理状態が分かってしまう。
感情的になることを諦めた主人公が、徐々に自分の内に秘めた怒りを明らかにしていき終盤には悲痛さを叫ぶ。
宇宙空間では振動する空気が無いので当然聞こえることはない。
地球へ帰還するまでの1ヶ月ほど、彼は何を考えていたのか。

ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、リヴ・タイラーなどのキャストは00年代風味を感じさせるも、現実的なテクノロジーや思想が現代に引き戻させる。
月面での略奪行為にどうしようもない人間の性を感じて絶望してしまった。
地球を飛び立っても待っているのはフロンティアと政治なのかと。
それがいかにもアメリカらしいなとは思った。
宇宙開発において当然中国やロシアとの競争も激化するだろう。
そんな人間に同じく絶望したからこそ、マクブライドは知的生命体を探しに海王星まで自らを導いたのかもしれない。
巻き込まれた母子は溜まったもんじゃないが、理解できないことはない。
スペースも限られ逃げ場のない宇宙空間でメンタル・ヘルスが重要視されるのも納得がいく。
非常に現代的な問題を孕んでいたと思う。
突然の暴力もいいスパイスだった。
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