ぱた

ソン・ランの響きのぱたのレビュー・感想・評価

ソン・ランの響き(2018年製作の映画)
3.5
舞台は80年代ベトナムのサイゴン。カイルオン役者〈フン〉と借金の取り立て屋〈ユン〉が心を通わせていくお話です。
二人の会話がすごく心地良かったです。

ユンが弦楽器のダングエットと共に足元で鳴らしていた球体のついた木製の打楽器は、タイトルにもなっているソンラン。調べてみると「二人の(Song)」「男(Lang)」という意味もあるとのこと。
ユンの演奏する音に乗せて、フンがユンの父親が書いた詩を歌うシーンは苦々しくも素敵だと思いました。

ラスト、血溜まりが土砂降りの雨ですべて流れて、帰る観客もフンでさえも事件に気付かないくらい跡形も無くなっているのが凄く切なかったです。曖昧なことを好まないユンの優しさと正義感が好きだったので尚更に。
フンはきっとこの公演期間を通してかなり芳醇なものに成長したことでしょう。唯一足りないと指摘されていた役の感情についてもクリアした今、固定客も増えて大きく羽ばたくんじゃなかろうかと思います。けれど両親を亡くした時と同じようなことが起き、ユンという足枷がさらに増えてしまったのではないかと思ってしまい、大変胸が苦しいです……(そういうの大好きですありがとう)

観た後は何故だか無性に雨漏りの音を聴きたくなりました。が、残念ながら快晴だったので、水道を少し緩めてしばらく水の音に耳を澄ませることにしました。

蒸した夏の夜にもう一度観たいな。
ぱた

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