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響け!情熱のムリダンガムのBaadのレビュー・感想・評価

響け!情熱のムリダンガム(2018年製作の映画)
3.8
主人公がヴィジャイのファンとて、いきなりマサラ上映みたいな映画の上映風景をたっぷり見せられたりしたこの映画、身終わった時はすごく良いものを見たと思ったりもしたのだけれど、思い起こしてみると音楽映画としては結構型通りかな、という部分もあって、ラストの展開など、本物の演奏家はキャストに使いにくい、というところの苦肉の策に見えないこともなく,なのですが、一人の青年の成長物語として鮮やかな映画ではありました。

タミルの大スター、ヴィジャイのファン活動以外は特に何もしていないお気楽な学生のピーター・ジョンソン。
一目惚れした女性に他にも自分のために何かをしなきゃ、と言われ家業の楽器(太鼓)制作を手伝ううち、打楽器の師匠の音楽に出会う。
天性のリズム感が身を助けるものの、そこには伝統芸能に伴う身分差別と音楽業界のさまざまな事情、人間関係など、色々な壁が待ち受けていた・・・

スタッフ、キャストがほぼ映画音楽や伝統芸能・音楽に関係している人ばかりのこの映画、映画制作の話は出て来ませんが、見るだけでタミル語映画をめぐる世界もなんとなくわかる作りになっています。

主演のピーターを演じている人も音楽監督としてもとても成功している人らしいのですが、一途で子犬みたいな雰囲気が可愛らしく、親しみが持てます。

見ていて爽やかで元気をもらえる映画ではありましたが、音楽映画としては特に特筆すべき何かがあったかというと割と普通だったかな。

例えば日本の伝統芸能でも脇役の家の子は一生脇役、みたいな規則はあるし、ルールはルールで、実力があるお弟子さんが入ってくればまた話は別という部分もあるだろうし、それと差別の問題はまた別ということで、タミル映画的なこの分野についての考え方とか切り口は受け止めることはできても、それ以上は実際中に入らなければわからないだろうし・・・

とはいえ、伝統音楽の奏者を志さなければ、主人公は差別の現実には気付かずにお気楽に青春生活を送っていられたのよね。

タミルだけじゃなく、それぞれの地域の伝統芸術がテーマの映画を見比べたりすると色々実感できることもあるだろうから、こういう映画もどんどん入って来てほしい。

役者さんたちのキャスティングはすごく的確で、特にガールフレンドと主人公一家と師匠は素敵だったなと。

あと、人気映画俳優のファンクラブが社会的な奉仕活動とかメンバーの世話とかをちゃんとしているのは、多分ノンフィクションに近いのだろうけど、なるほどと思いました。分断が激しい社会では絶対必要な活動だよね。
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