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運び屋の655321のレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.4
この映画はやはり監督・主演のクリント・イーストウッドと切り離して考えることは出来ない。

真っ直ぐに説教をされた。
元々イーストウッドの映画はそういうところがあったけど、『運び屋』は目を見据えて諭す。
“人生において最も大切なのは家族だ”と。

イーストウッドはズルい。
自分は高身長・高収入・男前で仕事も出来る。
それなのにこの映画の中で[老害]の役割も一手に引き受ける。
今では差別用語となった言葉を吐き、「インターネットは駄目だ」「最近の若者は…」
しかし決して謙虚な役を演じた訳ではない。
イーストウッドは自分の格好良さも織り込み済みで、[老害]にも救いの手を差し伸べる。
説教を聞いた次世代の人間は
「たまにはアナタ達の世代の話を聞かないと」
と受け入れるのだから。

俺を見ろ!
と若者にはしくじった主人公を見せ、
老人はそのしくじりが昇華されていく瞬間をスクリーンの中に発見し、老若男女が集う劇場の中で体感する。
実の娘を娘役として出演させているイーストウッドにとっては撮影の時間こそが“その瞬間”だっただろう。

大いなる自己賛美にケッとなる人もいるだろう。
だってイーストウッドはズルい。
仕事を使って家族を大事に出来るんだから。
大多数の人間はイーストウッドの真似は出来ない。

でも“たまには老害の説教を聞いてみる”のはいかがですか?
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