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運び屋のblacknessfallのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.9
色々な理由で映画は選ばれるわけなんだよ。
人間存在の深淵が見たいとか、自分の知る世界とはまったく異なる常識で成り立つ世界が見たいとか、映画って人間や世界を掘り下げ考察するのに向いてる娯楽なんだよな。
と、同時に映画とは、釘付けになるぐらいグロい情景が見たい、無闇にエロい女が見たいとか、怖いもの見たさやゲスい好奇心を満たすのにも向いた娯楽でもあるんだよ笑

おれがこの映画を観ようと思ったのは、もうこれは100%完全無欠に後者の方なんす。

御歳88のクリント・イーストウッド監督・主演、これだけなら最近のイーストウッドにそんな興味ないしスルー物件なんだけど、驚くべきことにイーストウッドのベッドシーンがあると聞き好奇心を抑えきれず観賞することに😁
しかもそのベッドシーン、3Pだって( ゚Д゚) こりゃあ観るしかねえ💨

88歳のお爺さん👴のベッドシーンなんて前代未聞、映画史上初なんじゃないかな!?無視できねえよ😬💨

こんなの本筋にまったく関係ないので、まず結果から言うと、その88歳👴のベッドシーンは確かにあった。
しかし、事をしたってのを仄めかす演出だったので期待してたのと全然ちがったのでがっかり(゜_゜)
がっつり美女といちゃつくイーストウッドが見たかった😂

下世話な好奇心はイマイチ満たされなかったけど、この映画を観てよかった。
家庭を省みることをしなかった男の晩年の孤独と後悔をペーソスに絡めてコミカルとシリアスを絶妙なバランスで画いた傑作だった。

あらすじだけ見ると、家族とも軋轢があり金も無くなったお爺さんが麻薬の運び屋になるって話だから。侘しくシリアスで物悲しい質感のような印象受けるけど、そこは70年代にエンタメ・アクションで演じ、監督もしてきたイーストウッドだけあって、湿っぽいだけではなく客を楽しませるユーモアをいい案配で配置してた。流石だよ。

芯のメッセージは嫁や子供を蔑ろにすると晩年虚しくなりまっせっていう普遍的でシリアスなものなんだけど、金に困って麻薬の運び屋になるお爺さんて、滑稽なんだよ、やっぱ。第三者から見ると笑
イーストウッドはここをちゃんと分かってて、この爺さんの運び屋の仕事っぷりをコミカルに演出してる。
一番おもしろかったのは、運び屋だから連絡は必須なんだけど、「メールしろ」と命じられるも、最新の携帯の使い方が分からなくてギャングの一人にメールの打ち方教えてもらうシーン。
ギャングの方が上司なんだけど、お爺さんがマジで携帯のことなんも分からないから懇切丁寧に教えるはめになる笑 もう端から見ると親父思い息子、良きヘルパーが介護してるようにしか見えないんだよ😀
このシーンはイーストウッドがガチの携帯音痴で、だからこそ出せる可笑しさのように感じた。88歳のリアルが炸裂😀

リアルてことではこの映画、モデルになった90歳の運び屋がいるんだけど、人格や背景はわからないので、イーストウッドの人格及び家族関係をかなり色濃く倒影してるらしい。

何回もネットや携帯が嫌いと言うシーンがある。麻薬を運んでる途中、パンクで立ち往生してる若い夫婦に出会すシーンにそれが特に強く出てた。
旦那の方はタイヤ交換できないからスマホで交換のやり方検索したけど、圏外で検索できず困ってたとイーストウッドに言う、これを聞いたイーストウッドが「最近のやつらは何でも携帯頼みだからなぁ~🎵」と満面の笑みを浮かべつつタイヤ交換してあげる。
イーストウッド、普段からこーゆーこと思って言ってそうな感じが出てたよ笑

それと家族関係、この運び屋爺さんは運び屋やる前からそれはもう家庭を省みることなく好き勝手にやってたらしく、奥さんや娘に毛嫌いされてる。
特に娘の不信と嫌悪は強く、孫娘や親戚がいる前でイーストウッドを激しく罵る。このシーンの娘の冷めて軽蔑しきったオーラと迫力が凄いんだよね。
この娘役の女優はイーストウッドの娘なんだって。実際イーストウッドも結婚したりしなかったりした5人の女性達の間に8人の子供を作り、ほぼほぼ放ったらかしだったらしい、、笑
だから、このシーンはガチなんだよ!演技するまでもなく娘さん的にはイーストウッドに対する気持ちをぶつけるだけのことだったのでここまで生々しい雰囲気が出たんだと思う😂

この映画の一番おもしろいとこは仕事や外での楽しさに夢中なり家庭を蔑ろにして晩年、虚しさと悔恨に囚われる男の話であり、それは多くの人に当てはまりそうな話でありながら、家庭人としてのイーストウッドの話になってる多層的構造なんだよ。

だから88歳で監督・主演てだけじゃなくてイーストウッドの私生活があって成立してる映画なんで、他の誰にもマネできない唯一無二の映画なんだよ。

映画のラストの方で家族の亀裂が修復される予兆を感じさせるシーンがある。
これなんか、もろにイーストウッドが自分の家族との間でこーゆー展開になって欲しいんだろうなって願望が込められてるように見えて微笑ましい気持ちになったと同時に「爺さん、そりゃ虫がよすぎるよw」とイーストウッドに言ってやりたくなった😀
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